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Pocky&PRETZ



























美樹がミックとキャッツで談笑していたところに、カランといつも鳴るはずのカウベルが聞こえないくらいの騒がしい声が2つ、聞こえてくる。

「だーかーら、今日は上手くいきそうだったんだって」
「はぁ?!アンタ、また肘鉄食らってたじゃない」
「違う。その後だ。おまぁさえ邪魔しなきゃ絶対上手くいってた」
「そんなことないわよ。あの彼女、泣きそうな顔してたもの。あたしが止めなきゃ彼女が泣き叫んでアンタが大変なことになってたわよ」
「だからってハンマーするか?普通。あの彼女、それ見てビクッとなってたぞ」
「上手くいかないの分かっていながらナンパを続けるからじゃない」
「へーへー、そりゃ悪ぅござんしたねー」

いつもの言い合いをしながらも真っ直ぐにいつもの指定席へと座る。
ミックは2人の席を開けて座っていたため、必然的に、左から、ミック、香、撩、という並び順となる。
スツールに座って落ち着いた2人。
2人とも、何事もなかったかのように、美樹に挨拶をする。

「あ、美樹ちゃん。おれ、いつもの」
「美樹さん、こんにちは」

美樹も慣れたもので、香にはにっこり笑顔で挨拶を返し、2人にコーヒーを出すために準備をし出す。
香の隣にいるミックは、2人のやりとりにクッと笑みを零す。

「やぁ、カオリ。今日もキュートだね」

すると、香は今気付いた、とでもいうようにミックの方を向いた。

「あら、ミックも来てたんだ」
「あぁ。やっと仕事が片付いてね。ちょっと休息」
「そっか」

香が笑顔でミックと話しているのを横目で見た撩は、「ケッ」と言って頬杖をつく。

「仕事終わりなら、家に帰って寝たらどうだ?」
「まぁ、そうしたいところだけど、カズエに会いに教授の家に行くつもりなんだ」
「そうなの?かずえさんもきっと喜ぶんじゃない?」
「そうだとおれも嬉しいね」
「・・・じゃぁ、かずえちゃんに逢いに、もう行けよ」
「んー、カオリとミキともうちょっと話してからな」
「けっ」

そっぽを向く撩とは対照的に、香とミックが仲良く話していると、香しい匂いとともにコーヒーが目の前に置かれる。

「はい、香さん、冴羽さん。どうぞ」
「サンキュ、美樹ちゃん」
「ありがと、美樹さん」

一口飲むと、ほぅ、と息をつく。

「ふふ。ここのコーヒーを飲むと、なんだか落ち着くわね」
「ありがとう、香さん」

その後、しばらく4人で談笑していたが、あっ、という顔をしていたずらっぽく笑みを浮かべた美樹が「じゃじゃーん」と言って出したものは、みんなお馴染みのお菓子、ポッキーだ。

「ねぇ、今日ってポッキーの日だって知ってた?」
「あー、知ってる。なんかCMでもやってなかったっけ?」
「そんなのみんな知ってるだろ?」
「え?おれ、知らないけど」

え?と言って残りの3人が、知らない、と言った人物へと振り返る。
そこには、キョトンとしたミックがいた。

「何それ。ポッキーの日って?」
「あら、ミック、知らないんだ」
「うん。カオリ、教えてくれるかい?」
「うん、あのね?ポッキーの日っていうのはね―――?」

ポッキーとプリッツの形が数字の「1」に似ていることから、11月11日は『ポッキー&プリッツの日』になったことを香がミックに教えている。

「へぇ、そんなのあるんだ」
「うん、それでね?ポッキーの日、といえば・・・」
「もしかして・・・」

撩が途端にイヤそうな顔になる。
それを見た美樹がクスッと楽しそうに笑う。

「そ。ポッキーゲーム」
「やっぱり・・・」
「あー・・・」

撩と香はそれぞれ、あまり嬉しくなさそうな表情になる。
ミックはそんな2人の表情を見て、訝し気に眉を寄せる。

「なんか2人ともイヤそうな顔、してるんだけど?」
「なーんでかしらねー」

美樹がクスッと笑う。
美樹は海坊主から聞いて知っているのだろう。
海坊主と美樹が結婚式を挙げた奥多摩での、2人のやり取りを。
撩が想いを打ち明け、香がそれを受け止めて。
周りは随分とヤキモキしていただけに、やっとか、という想いでいっぱいだ。
そして、今度は一歩、先へ進めよう、と考えているのである。

正直、自分達2人のことは放っておいてほしい撩。
それに、美樹の思惑に乗りたくないし、それがアリアリと解るだけに、少々勘弁してほしい、とも思っている。
だが、それを逆手に取ろうと撩はニヤリと笑って先手を打つ。

「美樹ちゃんとならやってもいいけど?」

このままだと絶対に香とやることになるだろうことは想像に難くない。
こんなとこで香とそれをやるのは照れが先立ち、イヤな撩が先回りして言うと、美樹はクスッと笑う。

「あら、私はファルコン以外の人とはしないわよ。それに、冴羽さんには香さんがいるじゃない」
「えー?なんでおれが香としなきゃなんないんだよ。イヤだ」

撩がそう云えば、香もムッとして言い返す。

「あら、あたしだってイヤよ」

互いに、フン、とそっぽを向き合うと、ミックが興味津々で美樹にルールを聞いている。
聞き終わったミックは目を輝かせて香を見る。

「ふーん。じゃぁさ、カオリ。リョウとやりたくないんだったらおれとしない?」
「え?ミックと?」
「そう、おれと。おれも1回やってみたい」

期待に満ちた目で香を見るミックに、面白くない撩は機嫌が悪くなる。

「やめとけよ、ミック。やるならかずえちゃんとやれよ」
「えー、カオリ、ダメ?カズエともするけど、その前にカオリともやってみたいんだ」
「ミック、お前っ・・・」
「お前はカオリとはしたくないんだろ?」

ミックは挑発するように撩を見て、フフンと笑う。
撩は何も云えず、グッと動きが止まる。

「ね、カオリ。どうかな?」
「え・・・あたしは・・・」

チラチラと撩を見るものの、撩はそっぽを向いたままでこっちを見ようとしない。
香は始め、なかなかこっちを見ようとしない撩にムッとしたものの、そのうち、撩の背中を切なげに揺れる瞳で見つめると、軽く息をついてミックを見る。

・・・撩はあたしが誰とこれをやろうと気にはならない・・・のよね、きっと。
だったら。

「うん、いいわよ」
「やった。じゃ、やろう」

・・・もしミックが迫ってきたらポッキーを折ればいいんだもんね。

少々、頬を染めた香がおずおずとミックが差し出したポッキーを咥えるのを見て、撩が一瞬、振り返って目を見開く。
反対側をミックが咥えると、けっこう距離が近いことに香は一瞬、後退りそうになる。
でも、一度やる、と言ったものはやらなければ、となんとか踏み止まる。

「じゃぁ、2人ともいい?」

美樹の合図により、始まったゲーム。
香はドキドキしながら少しずつ、少しずつ食べていく。
一方、ミックはこれ幸いとポキッ、ポキッと食べ進んでいく。
一気に距離が縮んでくるミックに焦る香。
どうしよう、と思い、ギュッと目を閉じる。

と、いつの間にか来ていたのか、撩がミックの真横に立っていて。

「あ、悪ぃ」

とベシッと思いっきりミックの頭を叩く。

「いてっ」

とミックの頭が勢いよく横に傾いだため、ポキッとポッキーが折れた。
その衝撃でおそるおそる目を開けた香は、ミックが頭を押さえてすぐ傍に立っている撩を睨んでいるのが見えて、驚く。

・・・あれ、撩・・・?

ミックが頭を擦りながら抗議の声を上げる。

「おい、リョウ。なんのつもりだよ。いってーなー」
「だから、謝っただろ。悪ぃって。お前の頭に虫が止まってたんだよ。ブンブン飛んでて邪魔だったから叩いてやったんだ。おかげでいなくなったから安心しろよ」
「ちょっと、うちの店でなんてこと言うのよ」
「って、んなわけないだろ?・・・ったく、ヤキモチ妬くぐらいなら最初からカオリにやらせるなよなぁ」

後半はボソボソと呟くミックに、撩は「あん?」と訊き返す。

「なんか言ったか?」
「いーや、なんでも」

機嫌が悪くなったミックが言うものの、ふと思いつくことが。

「今はリョウのせいで失敗しちまったから、次はリョウとカオリでやってほしいなぁ。なぁ、リョウ?」

ミックがそれはそれは意地の悪い笑みを浮かべると、撩はイヤそうな顔をする。
一方、香は・・・。

・・・撩はイヤって言ってるし、あたしも、その・・・恥ずかしいし。
きっと、あたしとしたら、撩はすぐにポッキーを折っちゃう気がする。
それはちょっと・・・イヤだな。

胸がチクリと痛む。

少し前に、奥多摩で撩は確かに自分への気持ちを吐露してくれた。
だけど、その後は相変わらずいつも通りで、あれは夢だったのかな、と思うこともある。
こんな時に、こんなゲームをやって、それが露呈するのもイヤだ。

そう思うと、いても立ってもいられなくて、ブンブンと首を横に振って、思わず席から立っていた。

「・・・あたし、用事を思い出したから帰るね」
「・・・え?」

驚く美樹やミックをよそに、香は撩と2人分のコーヒー代を払うと、店を出て行ってしまった。
それを無言で見る撩に、美樹は済まなそうな表情をして撩を窺う。

「香さん、怒っちゃったかしら?ごめんなさい、ちょっとふざけすぎたかもしれないわ」

美樹がそう言えば、ミックもそれに続く。

「あぁ、カオリに悪いことしちゃったな。リョウ、カオリに謝っておいてくれないか?」

2人ともバツが悪そうな顔になっているのを見て、撩は苦笑する。

「んな顔しなくても大丈夫だって」

言いつつ、上着を持って扉に向かっている撩。

「あー。悪いけど、今日はおれも帰るわ」

言いにくそうにそれだけ言うと、「じゃぁな」と店を出て行く。
残された美樹とミックは2人で顔を見合わせる。

「ちょっとやりすぎたかしら?まさか香さんがああなるとは思わなかったわ」
「あぁ。てっきりリョウがそうなるとばかり思ってたけど」
「はぁぁ。香さんに悪いことしちゃったわ」
「・・・おれもそろそろカズエのとこに行こうかな」
「でも、ミックがポッキーゲームを知らないなんてあり得ないわよね、よく考えたら。こんなに女好きなのに。今、思えば下手な芝居だったわよねー」
「ヒドいなぁ、ミキは・・・。まぁ・・・ね。ゲームはこの前、カズエとしたばっかりだし。でも、女好きってのは余計だよ、ミキ」

ミックが苦笑するが、美樹はお構いなしだ。

「香さんが心配だわ」
「それこそ心配いらないって。アイツがいるんだし」
「そうよね。・・・はぁ、早くファルコン帰ってこないかしら。会いたくなっちゃった」
「ところで、ファルコンはどこに行ってるんだ?」
「買い物よ。ちょっと買い出しで遠くまで行ってもらってるの」
「目が見えないのにか?」
「あら、業者の人と一緒だからそれは平気よ?」
「・・・ふーん」

そんな会話を交わしてミックはかずえの元へと向かった。





店を出た撩は走るでもなく、それでも香を追うと、香は買い物に行くでもなく、家に帰るようだ。
トボトボと歩いているのが見える。
撩の手には、先ほど美樹から受け取ったポッキーの箱がある。

「ごめんね、冴羽さん。お詫びに、これ、2人で食べて」

と帰り際にもらったのだ。

・・・これをもらってどうしろって言うんだよ。

と思うものの、今は香を見失わないようにする方が大事だ。
撩は距離をとったまま香を追った。

香はそのまま家に帰ると、ソファにポスンと座る。
そして、はぁ、とため息をつく。

「撩はあたしとはしたくない・・・んだよね」

口に出すと、また胸がツキンと鈍く痛む。
やる前に帰ってきてよかった。
もし、やって恥をかくのは自分なのだから。
香が、はぁぁ、とため息をついていると

「なにため息ついてんだよ」

撩が上から覗き込んでいて、ドキッと香の胸が跳ねる。

「撩?!なんでいるのよ」
「なんでって、おまぁが帰ってきたからおれも来たんだよ」
「・・・別に撩は残っててよかったのに」

・・・あ、今、あたし、可愛くないこと言ったかも。

ツキンと胸が痛む。
香が俯くものの、撩はそれを気にする素振りを見せずに隣に座ると、「ほれ」と言ってポッキーの箱を出す。

「え・・・これ」
「美樹ちゃんがくれた。2人で食べてってさ。んで、おまぁのこと心配してたぞ。・・・おまけにミックも」
「あ・・・」

いきなり店を出てしまった自分のことを美樹とミックに心配させてしまった。
申し訳なさに両手を拳にして膝の上の乗せ、深く俯く。

・・・悪いことしちゃったわ、美樹さんにも。ミックにも。
おまけに撩もきっと訳が解ってないだろう。
ちゃんと謝らなきゃね。

悪いのは自分だ。
香は自嘲気味に微笑んだ。

「撩、ごめんね。いきなり帰ってきちゃって。ビックリしたでしょ。美樹さん達にも謝らなきゃ」
「んー、まぁ、な。でも、あのままいたら、あそこでゲームさせられただろうな」
「・・・うん、そう・・・だよね」
「ま、これ喰えよ」

撩が開けてくれたポッキーを1本、手に取って食べる。
ポキッ、ポキッ、と音を立てて食べる。

「ポッキーは相変わらず美味しいわね」

香はクスッと少し微笑む。
その美味しさにちょっと浮上してきた香はまた1本、手に取る。
香が美味しそうに食べているのを見ていた撩も1本手に取り、口に運ぶ。

「甘いな」
「だってチョコだもん。当然でしょ?」

香をチラッと見ていた撩は、ポッキーを1本取ると、香を呼んだ。

「香」
「ん?なに?」
「・・・ん」

ポッキーを出した撩に、香は首を傾げる。

「くれるの?」
「・・・いや、違う」
「じゃぁ・・・なに?」
「これを咥えるんだよ」

ドキッ。
香の胸が鳴る。

・・・なに?何を撩は言ってるの?
さっきキャッツであれだけあたしとするのはイヤだって言ってたのに?
なんで今更?

香が訳が解らなくて、ただ撩を見つめる。
撩は、先にポッキーの先を咥える。
そして、香を見つめ返すと、くいっとそれを揺らす。
早く咥えろよ、そう促すかのように。

「・・・するの?ポッキーゲーム」

静かに香が尋ねる。

「・・・あぁ」
「・・・なんで?」
「なんでって・・・何となく?」
「何となく・・・」

香が警戒して納得いかなそうにしていると、撩は一旦口から離す。

「・・・アイツらの思惑に乗るのはイヤだけど、今は2人だけだし・・・試しにやってみるのもいいんじゃねーか?」
「・・・撩は、いいの?」
「何が?」

撩が怪訝そうに眉を寄せると、香が上目で撩を見遣る。

「あたしと、その・・・ポッキーゲームやっても・・・さ」
「あぁ・・・うん。まぁ・・・な。だから、試しにって言ってるだろ?」

撩の言葉に香の顔が一気に赤く染まる。

「あ、あぁぁ、うん。試しにね。試しに。うん、やろう、やろう」

焦っているのか、コクコクと首を縦に振って、あはは、と空笑いをしながら頷く。
そして、緊張のためか少し震える手でポッキーの先を押さえ、はむ、と口に咥えてふと顔を上げると、思ったより近くに撩の顔があって、一瞬、ビクッと身体が後退ろうとする。
ミックの時で判っているはずなのに、でも、それでも、この距離は例え撩であろうとも慣れない。
でも、なんとか堪えて撩を見据える。

撩が目で合図すると、香もコクンと軽く頷く。
ゲーム開始だ。

香は慎重に、小さく齧って食べていく。
撩はといえば、ポーカーフェイスのまま、ポキン、ポキンと齧りながら食べ進んでいる。
でも、確実に香との距離を縮めていて、香は内心で慌てる。

・・・なんで、撩は・・・食べてるの?
このままいくと、あたしとキス・・・しちゃうよ?
それでもいいの?

香は、内心で慌てながらも胸の鼓動が徐々に速くなってくるのを感じて、目を見開いたまま動けずにいた。
そして、撩も、あと一口食べたら香と鼻頭がくっつくぐらいの距離でピタッと止まる。
ポッキーを咥えているので、お互いに話すことができないまま、ただ、見つめ合う。

動く気配のない撩に、香はドキドキが止まらないまま、撩を見つめる。
ポッキーの長さはかなり短いはずだ。
ここまで短くなるとは思わなかった香は、満足だった。

今、この距離で撩が動かない、ということは、これが今の自分達の距離なのだ。
ここまで近づくとは思ってなかった香としては、十分だった。
でも、その一方、心のどこかでは、ここまで来たのだから、もしかしたら・・・という淡い期待も無きにしも非ず・・・と思いたい自分がいるのも確かで。

色々な想いがグルグルと回り、纏まらない考えに、どうしていいか解らずにギュッと眼を閉じる。

すると、撩が動いた。
ポキッと小さくではあるけれど、齧っているのがポッキーの振動で香に伝わった。

・・・え?

撩がまた食べ進め出したことで、ドキッと一際大きく胸が高鳴った香は、意識をそっちへ向ける前に、唇に何かが掠った感触がしたと同時にすぐにふいっと撩が離れていく気配がして、パチっと目を開ける。
すると、意地の悪そうな笑みをした撩が香を見ていて、カッと顔が熱くなる。

「なっ・・・い、今・・・」
「あん?」
「い、今・・・」

香はそれだけ言うと、口をパクパクしながら撩を見る。
それを見た撩は、ニヤリと笑った。

「今?なんかあったか?」

なんてしれっと言って、新たなポッキーを出してはポキッと食べる。

「・・・さっきのポッキー・・・どうしたのよ」
「どうしたって・・・食ったに決まってんだろ」
「食べたって・・・」

香の口には今さっきまで咥えてたポッキーの感触がまだ残っている。

「撩・・・食べたの?」
「あぁ、食った」
「それって・・・」

かぁぁ、とまた香の頬が熱くなる。
下を見るものの、ポッキーの残骸が落ちている形跡はない。
撩が食べた、ということは・・・先ほどのそれは。
あの感触は。

ガラス越しではない、それ。

初めてのキスは・・・撩と。
したかどうか分からないくらいの掠った程度の、キス。
でも、妙に鮮明に感触が未だに残っている。

「あ・・・」

と唇を手で覆って隠す。

ドキン、ドキン、と1回1回が大きく鼓動する胸。
それを意識した途端に、頬が、顔が熱を持つ。
それを撩に知られたくなくて、俯く香。

撩はそれを横目で見て、そっと口角を上げて笑む。

「今・・・あたしと・・・」

小さく呟いた言葉は、撩にも届かないくらい小さくて。

「あん?」

訊き返せば、香がバッと顔を上げた。
真っ赤な顔を。

「さっき、あたしと・・・」

切なげに揺れる瞳。
触れたか、触れてないか。

撩に直接訊きたいけれど、もし、否、と云われたら?

それが怖くて唇をキュッと引き結ぶ。
撩は、心許なさそうに自分を見つめる香に、そっと息を吐いた。
そして、ポッキーを1つ取ると、香へと向きを変える。

「さっき、何があったか知りたいなら、もう1回やるか?」
「!」
「そしたら、教えてやるよ」
「え・・・」

香は撩とポッキーを交互に見る。
そして、また撩を見ると、ジッと自分を見ていて、その目を見て、コクンと頷く。

「・・・分かった」

今度は香からそれを咥えると、撩もすぐに反対側を咥える。
そして、すぐにポキッ、ポキッ、と食べ進んでくる撩。
躊躇うことなく齧ってくる撩に、プチパニックになった香は怖くなった。
1回、齧ったままその場で止まっていた。

そうして、また香に触れる直前で一旦止まった撩は、1回、香を強く射抜くように見つめると、ポキン、と食べて・・・。
撩が近づいてくるな、なんて思っていたら・・・


!!


気付いたら、香の唇に撩のそれが重なっていた。
今度はハッキリと、香がちゃんと認識できるくらいに。

香は目を見開いたままでいたものの、撩から伝わる柔らかさと温かさに急に我に返って、キュッと瞳を閉じる。
数秒、触れていた唇が最後に少し強めに触れられてから香から離れて、ゆっくりと瞼を開ける。
そこには、真剣にも、優し気にも見える目をした撩がいて、香の胸がトクンと高鳴った。

何も云わずに2人で視線を絡ませ合うと、そのしばしの沈黙を破ったのは撩だった。

「・・・解ったか?」

その声は掠れ気味で、香の耳にはそれが甘く聞こえて、顔が赤くなる。
そして、小さく頷く。

「・・・解った」

それだけ言って撩を見ると、クッと口角を上げて笑んでいて、恥ずかしくなって目を伏せた。
すると、撩の手が香の頬に触れて、ビクリと身体が跳ねる。
そして、香の眼の前で撩がそっと囁く。

「・・・今度は、コレなしでしたいんだけど?」

そう云われて一瞬、解らなかった香は目を丸くするものの、撩の視線が向かうものを見て香もそれを悟り、一気に羞恥で耳まで赤くなる。
撩の急な変化についていけなくて、戸惑う。

「え・・・?撩?」

香の戸惑いが撩に伝わり、撩が甘く笑む。
そして、香の耳元に回り、唇をつけそうなくらい顔を近づけると、囁く。

「・・・ずっと、こうしたかった、って言ったら・・・お前は信じる・・・か?」
「え?」

大きく胸が跳ねる。
撩の意味することを理解して、すごい速さで心臓が脈打つ。

・・・何?
撩は、何を言っているの?
あたしと、こうしたかった・・・?
今、そう、言った・・・?

香は撩をマジマジと見つめると、撩もそれを逸らすことなく見つめ返してくる。
決してフザけている瞳ではなくて、一瞬、戸惑うものの、香は撩の目に吸い込まれそうになって、慌てて目を逸らす。
今までのことを考えると、撩が今言ったことは半信半疑ではあるけれど、今、触れ合ったのは事実だ。
・・・だから。

「・・・信じられない・・・けど、信じる」

そう言って、香は撩にはにかみ、笑んだ。
すると、撩は甘く煌めかせた瞳を細めてフッと笑みを浮かべる。
そして。


優しく、触れた。


香の後頭部に手を当てて、少し強めに押し付けてくる撩のそれに、香も撩を信じて瞳を閉じる。
離れて、また、触れる。

「・・・んっ・・・」

その度に、角度を変えて。
初めての香は、ただ、されるがままだ。

そして、啄むキスをリップ音つきで1回撩がすると、離れてから、優しく抱きしめられた。
頭を撫でられ、名前を呼ばれて撩を見上げる。
すると、ニヤリと笑った撩がいて。

「今の、アイツらには内緒な?」

ドキン。

いたずらっぽく言う撩に、香の胸が甘く痛む。

2人の秘密。

キスしたっていうだけでもドキドキものなのに、この上、撩と香、2人だけの秘密、などと云われてドキドキしなかったらウソになる。
甘美な響きを持つそれに、香の心中に甘い何かが満たされる。

それに嬉しくなった香は嬉しそうに微笑むと、コクンと頷いた。

「うん・・・2人だけの秘密ね」

というより、翌日、キャッツに行って訊かれれば、香の態度でバレるだろうとは思うけれど、それでも、と撩と笑いあうと、撩のその笑みがクスッと甘いものに変わり、囁かれる。

「ってことで・・・」

と、撩が近づいてきたのを見た香は、はにかんでからゆっくりと瞳を閉じた。






++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

<あとがき>
描いちゃったー(´艸`*)
きっと、色んな方が描かれていて二番煎じなのは十分解りきってますが、ポッキー&プリッツの日話ですvv
しかも、これまたRKの初チュー話だし(≧▽≦)
素直になれない2人は興味津々で見てくる面々を前にポッキーゲームをすることができず。
香ちゃんを怒らせてしまった、と思う撩は、今まで抑えてきたものを抑えきれなくなったのかもしれないですねー(^^♪
始めはポッキーを言い訳(?)にして触れてみたものの、やっぱり一度触れてしまったら、何度でも触れたくなってきて、しまいには、ナシでも触れちゃうっていう・・・vvv
うしし♪
2人の秘密って何か甘い響きを持ってますよねー♪
でも、香ちゃんは全部顔に出てしまうので、すぐにバレてしまう・・・っていう(*^▽^*)
そして、いつも通り、遅刻してますが、お気になさらず、スルーしていただけると有難いです(笑)
最後まで読んで下さった皆様、どうもありがとうございましたvvv

【 2014/11/13 (Thu) 】 NOVEL | TB(-) | CM(2)
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【 2015/06/04 】 [ 編集 ]
Re: はじめまして
>> あやとサマ

初めましてvv
ウチのような辺境サイトにお越し下さり、どうもありがとうございます(^^♪
うふふ♪
ステキ、と言っていただけてとっても嬉しいですvv
原作のままの2人を覗き見してるような~、と言っていただけて小躍りしそうなくらい嬉しいですv
どうもありがとうございますvvv
おまけに、萌え死にそう、とか、顔がにやけて、とかとか( *´艸`)
わー、嬉しい~♪
他の作品も楽しみにして下さり、どうもありがとうございますv
どうぞお時間のある時にでも読んでいただけたら嬉しいです(^^♪
コメントを下さり、どうもありがとうございましたvvv
【 2015/06/16 】 [ 編集 ]
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撩&香の一コマ♪
プロフィール

実梨

Author:実梨
シティーハンターが好きで、二次創作を始めました(^^ゞ
カッコいいリョウと可愛い香ちゃんを目指して、日常の色んな2人を描いていけたらいいな、と思ってますv
初心者なので、まだまだ未熟で駄文ばかりではありますが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです♪

更新履歴
・ 8/ 24 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 7/ 18 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 6/ 16 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 4/ 22 MEMOに拍手御礼(お待たせしてすみませんでした)
・ 4/ 17 遅ればせながら香ちゃん、お誕生日おめでとうvv
・12/ 7 サイト6周年vホントにどうもありがとうございますvvv
・11/ 13 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・11/ 2 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・10/ 19 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 8/ 10 EVENTに5周年記念SS(後編)をUP&MEMOに拍手御礼
・ 8/ 4 EVENTに5周年記念SS(前編)をUP(今更ですみませんっ)
・ 7/ 13 MEMOに拍手御礼
・ 7/ 2 NOVELをUP
・ 6/ 1 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 5/ 23 NOVELをUP
・ 5/ 5 MEMOに拍手御礼
・ 4/ 10 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 3/ 31 香ちゃんお誕生日おめでとうvv
・ 3/ 26 撩ちゃんお誕生日おめでとうvv
・ 3/ 23 NOVELをUP
・ 3/ 14 MEMOに拍手御礼
・ 3/ 2 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 2/ 19 NOVELをUP
・ 2/ 10 SSSをUP
・ 2/ 1 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 1/ 22 MEMOに拍手御礼
・ 1/ 10 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 1/ 5 どうぞ2014年もよろしくお願いしますvNOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・12/ 31 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・12/ 29 MEMOに拍手御礼
・12/ 25 NOVELをUP
・12/ 24 NOVELを2話分UP
・12/ 15 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・12/ 7 サイト5周年~♪ホントにどうもありがとうございますvv
・11/ 28 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・11/ 18 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・10/ 20 MEMOに拍手御礼
・10/ 5 MEMOに拍手御礼
・10/ 4 NOVELをUP
・ 9/ 23 NOVELをUP
・ 9/ 16 LINKに素敵サイト様1件追加!&MEMOに拍手御礼
・ 9/ 1 NOVEL2話目をUP&MEMOに拍手御礼
  ・ 8/ 15 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 8/ 5 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 7/ 30 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 7/ 7 七夕SSをUP
・ 6/ 30 NOVEL1話目をUP&拍手御礼v
・ 6/ 17 ついに!新しいPCになりましたーっvvv&拍手御礼v
・ 2/ 8 EVENTに4周年記念SSをUP&MEMOに拍手御礼v
・ 1/ 20 LINKに素敵サイト様1件追加!
・ 1/ 8 NOVELにお正月SSをUP&MEMOに拍手御礼v
・ 1/ 2 2013年v新年あけましておめでとうございますvv今年もどうぞよろしくお願いいたします☆
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