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猫甘祭り (後編) <5周年記念SS>
























翌日。
キャッツのイベント『真夏のスイーツ祭り』開催。

香は昨夜の撩との甘い時間を思い返し、微睡みながらも、いつもより早い時間に撩の腕から抜けて起きる。
イベント初日に相応しい、すでに真っ青な空にサンサンと差し込む陽射しに、今日も暑くなりそうね、と伸びをしながら思う。
早速家事に取り掛かり、朝食、洗濯、と慌しく動く。
撩の分を用意して、忘れ物はないか荷物を確認する。

・・・うん、大丈夫。
今日から頑張るわよ、香。

自分自身に気合を入れて、家を出る前に撩に声をかける。

「撩、あたし行ってくるから。後でね」
「・・・・・・おぅ」

と寝ぼけ眼ながらも力強く香の腕を掴んで引っ張り、ちゅ、と触れるだけのキスをする。

「もう、撩ったら」

困ったようにそう言いながらも、顔は、はにかんでいる。

「じゃぁね」

そして、家を出た。
まず、駅に向かい、依頼が来ているか確認するものの、やっぱり来ていない。
でも、このイベント中は来ても困るわね、とこそっと思う。

そして、そのままキャッツへ。
中に入ると、すでに調理場では男達が忙しなく動いていて、美樹もテーブルを拭いたり、と準備をしている。

「おはよう、美樹さん」
「あら、香さん。おはよう。今日からよろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします。あっちで着替えてくるわね」

香は軽く調理場にも挨拶をして、着替えに行く。
この間と同じように着替える。
鏡の前で後ろを確認したりして、そわそわするものの、ふぅ、と1回大きく息を吐くと、美樹の元へ向かう。

「美樹さん、どう?」

緊張した面持ちで訊く香に、美樹はにっこり笑顔で答える。

「よく似合ってるわ」
「そうかな?ありがとう」
「香さん、あとは笑顔よ、笑顔」
「うん、そうね。・・・・・・ところで、美樹さん」
「ん?」
「あたしさ、前にとある依頼で撩に男扱いされて『かおる』って呼ばれたことがあったんだけど、もしよかったら、美樹さんもそう呼んでみる?あたし、今、男装してるし」

香がいたずらっ子のようにクスッと笑って言うと、美樹は「へぇ、そんなことがあったんだ」と興味津々だったものの

「それはやめとくわ。忙しい時に『かおる』さんとかって呼べないもの。いつも通りの香さんでいいのよ?私もいつも通り香さんって呼ぶし」
「あ、あはは、そう、そうよね」
「香さん、リラックスして。緊張しなくていいから。香さんは笑顔が素敵なんだから、笑って。ね?」
「うん」

そう答えたものの、香は勝手知ったる店だけど、いつもと違う慣れない服装に少なからず緊張していた。

そして、ついに、開店した。
とはいえ、そんな早くに客が来るわけもなく。
しばらくは動きながらもいつもみたいに2人で話しながら過ごすものの、お昼近くになると徐々に人が来るようになり、忙しくなる。
香もその忙しさに笑顔は心がけるものの、すっかり男装とか忘れていた。

でも、周りのサラリーマン達の間で、こそっとこんな会話が繰り広げられていたのを香は知らない。

「新しくバイトが入ったのかな?でも、あれ、男?女?どっちだ?」
「恰好からすると男だけど・・・」
「男・・・か?」
「でも、スタイルすっげーいいぞ?」
「声も高いし・・・」
「美人だし?」
「おれのタイプだ」
「女だな」
「うん、女だな」
「・・・すっごくキレイでスタイルいい男なのかもしれないけどな」
「・・・・・・」
「それはないんじゃねぇ?」
「おれは女に賭ける」
「おれも」
「それじゃ、賭けにならないじゃん」

あははは・・・と笑う男集団が、まさか、そんな話をしているとは全く思わない香だった。

やがて、昼時を過ぎ、ちょっと落ち着いた時を見計らって、賄い料理でお昼を食べる。
でも、すごく美味しい。

「うわっ、美味しい。これが賄いだなんて・・・もったいない」
「ありがと、香さん。今はバイトの子もいるし、当分は色んな人が作った美味しい賄いを食べられるわよ」
「わー、嬉しいv絶対云わないけど、撩が羨ましがるだろうなぁ」
「そうね」

2人でクスッと笑いながら話していたが、やがて話題はさっきまでの忙しさに移る。

「それにしても、さっきは忙しかったわ。お昼時っていってもこうなの?」
「そうよ?でも、今は香さんがいてくれるからちょっと楽だけどね」
「へぇ~、こんな忙しいのに今まで美樹さん1人で切り回してたのね。すごーい、感心するわ」

香が素直に感嘆の声を上げると、美樹は恥ずかしそうにはにかむ。

「でも、香さんも初めこそ緊張してたけど、途中からはいい笑顔だったわよー」
「え、ホント?嬉しい。忙しくて途中からあんまり意識してなかったんだけど」
「香さん、この調子よ」

そうこう言っているうちに、今度はチラシを持った女性が3人来た。
飲み込みが早い香は、すでに、自然に接客をしていて、美樹はクスッと微笑む。
姿勢良く立って一度にこっと笑んでから片手を前にやってウエイターのように頭を下げてお辞儀をしてから微笑んで客を見る。
それから爽やかさを心がけて一言。

「いらっしゃいませ」

そして、またにこっと笑う。
すると、そのお客さん達は、香を見つめたまま呆然としていたものの、ハッとして慌てて会釈を返す。

「あ、あのっ、3人で」
「はい。こちらにどうぞ」

・・・さすが香さんねー。
飲み込みが早いから、私もラクだわ。

美樹も挨拶すると、香が席へと案内して注文を取っている。
香が歩く後ろ姿も、モデルをしたこともあるせいか、どこか色気が見えるような。
それを何気なく見ていた美樹だったけれど、あら、と目を丸くする。
女性達が香を見て、少し頬を染めているように見える。
美樹はしてやったり、とほくそ笑む。

・・・やっぱり私の思ったとおり、香さんの魅力ってすごいわねー。
男性だけじゃなくて、女性までも惹きつけるんだから。
さすが『新宿のアイドル』って呼ばれてただけあるわね。
あら?
今もそう呼ばれてるのかしら?
でもまぁ、あの彼女達の気持ちも解るけどね。
香さんの笑顔は見てるだけで場を明るくするし、元々が中性的な顔立ちでキレイで美形だし。
あんな恰好でキレイに微笑まれちゃった日には、もう照れるかポーッとするかしちゃうわよね。

笑顔で早速、注文を取ってきた香は美樹にウインクする。

「スイーツ祭りの注文、第一号よ」
「あら、嬉しい」

香はクスッと笑うと、早速、裏方にいる海坊主達に伝える。
しばらくして出てきたのは、香ですらうっとりしてしまいそうなほど、見た目もキレイで可愛くて、尚且つ、手軽に食べられそうな、そんなデザートだった。

それを持ってきた香のことをジーッと見つめて「あ、ありがとうございます」とまた頬を染めて言う。
何せ、スイーツを渡す際に、1人1人に笑顔を向けて渡しているのだ。
照れる女性が出てきても不思議ではない。

そして、視線をスイーツに移した客である女性達は、今度はスイーツの完成度にキャーって歓声を上げて、写真をバシバシ撮っていた。
しばらくもじもじしていたものの、一口食べて、また感嘆の声を上げる。

香はそんな女性客達の反応をフフッと笑いながら見た後、美樹の元へ戻ると、興奮したように話し出す。

「あれ、あたしでさえ食べたいと思うほどの威力よ。すっごく美味しそう。見た目もキレイで、さすが海坊主さんね。うーん、後であたしも食べたいわっ」
「大丈夫。私が頼んであげるわ」

美樹がウインクすると、香もパァッと笑顔になる。

「ホント?ありがとう、美樹さん」

そんなことを言っていると、また女性客が入ってくる。
慣れたもので、香が同じようにスッと接客に入る。

そんな香を見ていた美樹だったが、カランとドアが開いて、ある男が入ってきたのを見てクスッと笑う。

「いらっしゃい、冴羽さん」
「美樹ちゃん」

いつも通り入ってきたのは撩で、すぐにキョロキョロして、香の姿を見つけると一瞬、ギョッと目を見開き、明らかに驚いた表情をしてから、頬を引きつらせたままスツールに座った撩に、平静を装えてないなんて珍しい、とまたしてもほくそ笑む美樹。
どうやら、客の視線が香に向かれていたのと恰好に意表を突かれてか、女性に言い寄る気もなくなったみたいだ。
それに対して、また美樹がクスッと笑う。

「どう?香さんのカッコ。とっても似合ってるでしょ?香さんってスタイルが良くて美人だからこーんな男装もスルッと似合っちゃうのよね。女性からの反応も上々よ」
「あんなカッコさせたの美樹ちゃんなんだって?ったくー、なんちゅうカッコさせるんだよ」

撩がイヤそうな顔をしても、美樹はしれっとしている。

「あら、スイーツっていったら女性でしょ?そこで香さんが男装して接客したら絶対リピーターが増えると思ったのよ。だって香さんったらすごく美人でキレイなんだもの。女性だってほっとかないわよ?それに、ほら」

そう言って、目で合図して、撩もそちらを見ると。
何やら注文以外の話題で盛り上がってるみたいで、なぜか香が頬を染めて大げさに手やら首を振っているようだ。
あれは、からかわれた、というより、香が照れるようなことを云われたかなんかしたのだろう。
香が慌てて戻ってきた。
そして、そこでやっと撩がいることに気付く。

「あれ、撩。来てたんだ」
「おぅ。にしても、また凝ったカッコしてるな」
「あはは」

香が照れ笑いをした後、撩を覗き込む。

「ねぇ、撩」
「あん?」
「・・・どう?このカッコ」

とちょっとしたウエイターっぽいポーズをとってみる。
が、あえて『似合ってる?』とは聞かなかった。
バカにされたくなかったからだ。
そして、それに対しての撩の答えは・・・

「・・・・・・男女」
「なっ、何ですって?!」

視線を逸らしてボソッと呟いた撩に、香はお盆でバコッと叩く。

「ってぇー。何すんだよ」
「アンタがそんなこと言うからでしょ?」
「まぁまぁ、香さん。落ち着いて?冴羽さん、照れてるだけですっごく似合ってるって」
「でも・・・っ」

撩が言ったことを考えて、美樹の言葉を否定しようとした香に、美樹はにっこりと笑う。

「香さんが男装しててもあまりに似合ってるんで、つい照れ隠しでそう言っちゃっただけなのよ。ねぇ、冴羽さん?」
「あのなぁ。美樹ちゃん、おれがいつそんなこと言ったよ。おれは―――」

その時「あのー、すみません」と声がかかり、香がミニハンマーでポコッと叩くと、慌てて客の方へ向かった。
そこで、追加注文を受けた後、何故か、女性客の1人がデジカメを出して、香と写真を撮っている。
あ、あの・・・?と訳が分からず慌てる香と、香の表情や仕草に「キャーッ」と黄色い声を上げる女性に、撩は・・・ふいっと顔を逸らす。
顔を逸らしてから、ん?と思う撩だったが、まさか、自分が香に関して女に対してもヤキモチを妬くなんて・・・と否定したかったが、自覚する想いにぶっきら棒に美樹に「いつもの」と頼む。

撩の行動の一部始終を見ていた美樹は、そんな撩が可笑しくてたまらず、笑いを堪えることができず、プッと吹き出しながら「はいはい」と応じる。

「香さん、モテモテで妬ける?」
「・・・なんで、おれが妬かなきゃならないんだよ」

美樹が楽しそうに訊いてくるのに対し、撩はふて腐れて、くっそー、と舌打ちすると、戻ってきた香がまたお盆でバコッとたたく。

「こら、撩。何があったか知らないけど、お店で舌打ちなんかしないの」

と、まるで子供を叱るみたいに窘める。

・・・誰のせいだと思ってんだよ。

と喉まで出かかったが、寸でのところで抑えて、今もクスクス笑う美樹から出されたコーヒーを取り、口に持っていく。
そっぽを向いてるあたり、素直じゃない男の精一杯の拗ねた証拠か。
香は、はぁ、とため息をついて、ま、いいけどね、とカウンターの中へ入っていく。

実際、撩が見ても、香はその衣装を着こなしていて、抜群のスタイルなので女性だと解ってはいても立ち振る舞いは男のようで、行動もテキパキとした中に優雅さがチラチラ見え、おまけの香の多彩に見せる笑顔。
にっこり笑ったり、フッと微笑んでみたり。
そのギャップと、美形と云える中性的な顔立ちがさらに女性の気を引くように思う。
そして、撩も惚れた欲目をなしにしても気になって視線が向いてしまうのも確かだ。
それほど、香は男女問わずに周りを惹きつけていて、やっぱり舌打ちをしたくなってしまう。

撩が、チラと、客を見ると、その視線はチラチラと香に向けられていて、やっぱり面白くない、とその視線を自分に向けようという気にすらならず・・・というか、それだったら香をこの場から攫いたいぐらいだ。
かといって、相手が男じゃないだけに下手に牽制することもできず、やり場のない怒りをどこへも向けることができず、ぐいっと一気に飲み干し「・・・帰る」と一言残し、早々にキャッツを出て行った。
直後、美樹はもう堪え切れない、とばかりに声に出して笑いだす。

「どうしたの?」

香が訊くと、美樹は笑ったまま話し出す。

「あー、可笑しい。冴羽さんの態度。見てて可笑しいのなんのって。あの人って意外と子供っぽいところがあるのね?」
「え?うん、まぁ、時々。でも、どうして?」
「今日の冴羽さん、見てて面白かったわー。私が見てたの知ってるくせに、でも、抑えられなかったんでしょうね。まったく、香さんったらある意味、罪作りな女性ね」
「ええっ?!何それ、美樹さん。あたしが?!」
「そうよー。明日は来るかどうか分からないけど、次に来た時に冴羽さんのこと、こそっと見てみたら?面白いものが見れるから。あ、でも、香さんじゃ、冴羽さんもすぐ気づいちゃうわね、きっと」
「それってあたしには面白いものが見られないってこと?」

香がそう訊くと、美樹はうーん、と考え、うふふ、と笑う。

「ま、それは香さんが直接冴羽さんに確かめてみたら?」
「えー、それって絶対無理だと思う」

自分が言ったところで撩がそれに答えるはずはないのだ。
しかも、内容が内容なだけに。
香が困った顔をすると、美樹は「ホントに香さんって可愛いわね」と言い残して仕事に戻っていく。

・・・たぶん、訊いても撩は答えてくれないよね。
でも、なんて聞けばいいんだろ?
美樹さんにお店に来た時に、撩が面白いことしてたって云われたんだけど、何してたの?
って?
いや、無理だわ。
もう、美樹さんったらー、その気にさせるだけさせて、すっごい気になるじゃない!!

香は苦笑して、仕事に戻った。

その後も女性を中心にお客さんが来てくれて、ほとんど宣伝してないにしては上々の初日だった。
訊けば、「部の先輩に教えてもらった」だの「同僚に聞いた」だの「大学の友達に聞いた」だのそんな答えが返ってきて、常連さんへの宣伝は大成功だった。
夜、時間どおりに閉店して、片付けをして上がった香は、スーパーで買い物をして帰る。

「ただいまー」と家に入れば、リビングには撩の姿はなく気配を探ってみたものの、いないことが知れた。
あれ?と思いながらも食材を冷蔵庫へ仕舞っていると、撩がのそっと入ってきて、ビックリする。

「お、帰ってきてたのか」
「わっ、ビックリした。うん、ついさっきね」

と撩を見れば、コンビニの袋を下げていて、撩が中から缶ビールを取り出して、勝手にプシュと開けて飲んでいるのを見て、夕食はどうしたのか、と思い、訊いてみた。

「ちょっと、あたしのはないの?!自分だけ飲んでズルい。・・・って、ところで、撩、夕食は?」
「あぁ、まだ」
「・・・はぁ?!まだって・・・」
「だって、おれ、作りたくないし」

そうしれっとして言う撩。
本当は作れるが、撩なりの拗ねである。
だけど、香はパチパチと瞬きをしてから、肩を竦めてから諦めたように告げた。

「ま、そんなことじゃないかと思ってたんだ。今から作るからちょっと待ってて」
「おぅ」

香はそんな撩には気付かずに、話を進める。
そして、それには素直に応じる撩。
その前に、悔しいからお茶を一杯、ゴクゴクと音を立てて飲み干す。
簡単に野菜炒めを作り、夕食にする。
その後、コーヒーを飲みながらそれとなく撩に訊いてみたところ、やっぱりはぐらかされた。

そして、その夜はいつもより強く求められ、苛められ、イキたいのになかなかイカせてくれず、結局、香から強請る恰好になってしまった。

「りょうっ・・・!」

香が強請ると、撩はニヤリと笑ってすぐに応えてくれるのだけど。


―――そんなこんなでバイト1日目が終了した。
次の日、さらに次の日と口コミで噂は広がり、たまに男性客も来るものの、圧倒的に多いのは女性客だった。
そして、撩はと言うと、結局、毎日キャッツに入り浸り、香に対して黄色い声をあげる女性客に内心でムッとして、そんな自分に内心で舌打ちをする、そんな日々が続いている。
まぁ、男が香に気を持たないだけまだましだろう。

そんなある日。
いつものように、撩がカランとドアを開けて入ると、いるのは女性客だけが数グループ。
それを横目に見て、いつものスツールに座ると、カウンターの中にいるのは香だけだった。

「いらっしゃいませ」
「あれ、おまぁ1人なんだ?」
「うん。今、美樹さんは休憩してるわ」
「ふーん。あ、いつものな」
「はーい」

撩が相手だと香の返事もどこか緩くなり、それが撩には気を許してる、と嬉しいことであり、口角がクッと上がる。
そして、前に置かれたコーヒーは美樹が出すのと同じなのだけど、香は不安そうに撩を見つめている。
その視線を受け止めつつ、カップを口に運ぶ。

「・・・どう?美味しい?」

そういえば、香がキャッツで撩のコーヒーを淹れるのはこれが初めて・・・か?
撩はチラと香を見ると、瞬きすら忘れたように撩の瞳をじっと見つめていて、フッと笑んだ。

「そんなに見るなよ。照れるだろ?」
「で?どうなの?美味しい?」

・・・聞いてねぇし。

撩の言っていることはスルーして、香はただ、撩が飲んだコーヒーの感想のみを待っていた。
それだけ不安だということなのだろう。
苦笑して、仕方ないから、ボソッと呟く。

「・・・家で淹れてるのと同じくらい・・・」
「それって美味しいって言ってる?」

香が半信半疑で訊いてきて、撩はニヤリと笑う。

「それは自分で考えな」
「えー、ひどくない?」

・・・そんなの、家でおまぁが淹れてくれるのと同じくらい『美味い』ってことだ・・・なんて言ってやらねーよ。
それくらい、自分で考えろ。
ここ毎日、いつも昼間、何故か、おれが女相手に妬くハメになってんだから、それくらいの仕返しはさせろ。
ったく、どんだけおまぁ一筋なんだよ、おれって。

撩は内心で苦笑する。

撩に不満を言いつつも、香はいつ客に呼ばれるか分からないので、あまり深く考えてる暇はない。
なので、家で飲んでる時も残さず飲んでるので美味しいんだろう、と思うことで自分を納得させる。

「ねぇ、撩はいつもコーヒーだけだけど、たまにはケーキも頼んだら?海坊主さんが作ったケーキ、美味しいって評判だし、撩も一度食べてみたらいいのに」
「けっ、いらねーよ。誰がタコが作ったケーキなんか食うかってんだ。甘いのはおまぁだけでもう腹いっぱいだっての」
「撩ったら、美味しいのに・・・・・・って今!」

香がかぁぁぁ、と顔を真っ赤にする。

「あ、アンタ、今、とんでもないことをサラリと云わなかった?!」
「ん?何か言ったか?」

しれっと言ってのける撩。

・・・あ、甘いのはあたしだけでお腹がいっぱい、とか。

香は「もうっ、撩のバカッ」と真っ赤なままお盆で叩こうとするのをヒョイと避ける。

「そう何度もやられてたまるかってんだよ」
「くっ・・・素直に当られなさいよ」
「ヤなこったー」

撩はニヤリと笑って香からの攻撃を躱していたが、そのうち、それをパシッと掴む。
そして、くいっと目で客の方を合図する。

「ほれ、いい加減やめないとみんなが見てるぞ。いいのか?」
「あっ・・・」

香はそれを慌てて引っ込めて仕事を再開させる。
いつの間にか、2人のやりとりを見ていたみたいで、何やらコソコソと囁き合ってるみたいだ。
あちゃー、とやっちゃったって顔をした香と目が合った撩。
思わず2人で苦笑する。

「ばーか」
「・・・ごめん」
「ま、おれはいいけど?」

と、撩はちょっと機嫌が良くなったみたいだ。
ここまで言い合いをしておけば、周りは『親しい2人』だと思ってくれるだろう、との意味合いを込めてのことだけど、伝わったかどうか。
チラ、と横目で客を見れば、慌てて視線を逸らされて、何やらボソボソと言いあっていて、一体、そんなに何をボソボソと話しているのか、と撩は頬をひきつらせる。

そこで、美樹がカウンターに戻ってきた。

「香さん、ごめんなさいね。後は私がやるから香さん、休憩に入って?・・・あ、冴羽さん。来てたのね。あら、ちょうどいいから、香さんもいつもの席で一息入れたら?」

戻ってきた美樹がクスッと笑って、香にいつもの席を勧める。

「ありがとう。でも、いいの?中で休憩しないで」
「いいの、いいの。気にしないで?その方が喜ぶ人がいそうだし」

美樹が意味ありげに撩をチラと見る。
それを受けて、撩がジト目になる。

「それ、誰のこと言ってるわけ?」
「さぁ?誰のことでしょうねぇ?」

楽しそうに目を細めて笑う美樹は置いとくとして、香は「じゃぁ、お言葉に甘えて」といそいそと撩の隣に座る。

「香さん、お疲れ様。はい、どうぞ」

美樹が用意してくれたのは意外にも紅茶だった。
あれ?という顔をして美樹を見る香に、美樹はクスッと笑う。

「お店ではほぼコーヒーばっかじゃない?だから、休む時は紅茶を飲みたいかなって思って。私も休む時は紅茶をよく飲むのよ?」
「わぁ、ありがとう。これもいい香りしてる」

香はそれを飲んで、ほぅ、と息をつく。
それを優し気な瞳で撩が見ていると、それを見ていた美樹がボソリと呟く。

「あぁ、今の冴羽さんの顔、写真に撮っておきたいぐらいだわー」

その言葉にギョッとする撩に、美樹は手でカメラの形を作って、人差し指でシャッターを切るマネをする。

「え?」

美樹を見て香が小首を傾げている。
美樹が香にこそっと言おうとしているのを見た撩は、何気なさを装って、客の方へ指をさす。

「美樹ちゃん、なんかあっちの方で呼んでたみたいだけど?」

おどけて言う撩に、美樹がパッをそっちを向いて、パタパタと行ってしまう。

「美樹さん、何て言おうとしていたのかしら?」
「いや、たいしたことないんじゃないのか?」
「えー、でも、美樹さん、撩の顔を写真に撮りたいとか何とか云ってたじゃない」
「あー・・・それは。うん、おまぁが飲んでる紅茶が美味いのかな?って思って見てただけだって」
「え、そうなの?じゃ、飲んでみる?」

もちろん、撩は隣に座った香を見ていただけなのだが、香は撩の言ったことを信じたみたいで、カップを差し出してくる。
あー、うん、じゃ、いただきます、と言って、それを飲む。

「あ、美味いじゃん」
「うん、美味しいでしょ?あたしもたまには紅茶も飲もうかな」

そう言って、撩にふわりと笑いかける。
撩は「じゃ、その時はおれにも淹れてもらおうかな」と言うと、香は「うん、一緒に飲もう」ともっと嬉しそうに笑い、撩は、それがどこか面映くて、フッと微笑む。
そこで美樹が戻ってくる。

「ありがとう、冴羽さん。冴羽さんが言ってくれなかったら気付かなかったとこだったわ」
「あ、あぁ。そうだったろ?」

撩はそう言いつつ、え?マジだったの?と、顔が一瞬、驚いたのを見たのは誰もなく、内心でホッと胸を撫で下ろす。
実は、美樹をここから離そうとして適当に言っただけだったんだけど、と撩は苦笑する。
ま、結果オーライってことでよしとするか、とコーヒーを全部飲む。

「じゃ、おれ帰るわ」
「うん、気を付けて帰ってね」
「あぁ。おまぁもな」
「うん」

そう言って、撩にしては珍しくちゃんと支払をして帰っていった。

「え・・・嘘。冴羽さんがちゃんと支払をして帰った・・・?」
「良かったじゃない、美樹さん」

そう言った香だったが、美樹はというと、それをレジにしまうと外を見る。

「今、こんなに晴れてるのに・・・今日、予報で雨が降るなんて言ってたかしら?」
「ちょ・・・美樹さん・・・あのねぇ」

香が苦笑して呆れると、美樹は笑って「ごめんなさいね」と謝罪する。

「だって、冴羽さんが・・・あの冴羽さんがよ?支払して帰るなんて、どれだけ久しぶりなことか」
「あはは・・・ホントにごめんなさい」
「あら、香さんが謝ることじゃないわよ。いけないのは冴羽さんなんだから」

その後、女性客がみんな帰って行ったのだが、支払の時、何か言いたげな眼で見られた香は、頭の中が?マークが飛び交っていた。
それがまさか、撩との関係を聞きたがっていた、とは知る由もない香だった。

家に帰った後、撩に女性客の帰り際のことを話したら、撩は苦笑する。

「おまぁ、マジで女にまで好かれるなよ?」

と冗談ともつかぬ意外にも真剣な表情で云われて、キョトンとしてそれを笑いとばす。

「撩ったら何言ってるのよ。そんなことあるわけないでしょ?あたしが女だって皆知ってるし、好かれるっていいことじゃないの?」

ダメだ。
撩の言ってる意味が伝わってないようだ。
撩が言っているのは、香が男装して男っぽく振る舞うことで、女性客が勘違いして、というか、間違えて惚れてしまうことも無きにしも非ずだと言おうとしたのだが、香には伝わってない。
どこまで鈍感なんだ、おまぁは、と大きなため息をつきたくなる。

それを解消するために、香を抱きしめ、香自身から沸き立つ匂いをいっぱいに吸い込み、髪に顔を埋める。

「ちょ・・・りょう?」
「ん・・・」

撩が甘い声を出して、香を抱きしめている手を、身体を這い回すようにゆっくりと動かす。

「・・・っ!あっ・・・」

香がピクリと感じて撩を見上げると、素早くキスをして、柔らかく甘い唇を吸う。

「んっ・・・」

香がくぐもった声を出すと、そのままラグマットの上に押し倒すと、唇を動かして、首筋に触れて、ちゅ、と跡を残さずに優しく触れる。

「やっ・・・りょぅ?ダ・・・メ・・・」
「何がダメ?」
「跡・・・残しちゃ・・・ダメ」
「・・・つけねぇよ」

ホントは跡をつけたい、残したい。
コイツはおれの女だ、男だろうと女だろうと手ぇ出すな、と印でもって示したいけれど、それで困るのは香だ。
要するに、妬いているだけなのだが、心置きなく跡を残すのはこのバイトが終わった後だ、と今は、優しく触れるだけにしようと、なんとか少ない理性を総動員する。

「んんっ・・・あぁ・・・やぁ・・・んっ・・・」

香の服を脱がすと、服で隠れる場所には容赦なく跡をつけ、己の象徴を香のナカで暴れさせる。
なんとかそれで溜飲をさげるのは、バイトが始まってからいつものことだ。
おかげで、香の身体には、服で見えないだけで、常にこっそり印がついている。

「香・・・」
「・・・りょうっ」

撩からの激しくも優しい愛撫で香がいつもより一際高く上げる官能的な甘い嬌声を上げるので、刺激される撩の総動員された理性はあっけなく崩れ、円みを帯びたしっとりと吸い付く柔らかい肢体に夢中で貪りつき、逃げないように腰をグッと支えて自身を打ち付け、香もそれに応えるように撩の背中に爪を立て、そして、共に果てては、見下ろす香のしどけない肢体に煽られ、また身体に手を這わせて抱く。

そんな毎日を過ごしながらも、それ以降も、海坊主とバイト学生が作るスイーツはどれも順調な売り上げを見せて、客の入りも美樹が「予想以上」と驚くほどだった。

それから、1回、ミックが来たことがあったのだが。
香の恰好を見たミックは開口一番

「Oh、カオリ・・・。その恰好・・・」
「どう?」

香がピシっと決めて、一礼すると、ミックはチラと撩を見ると、クスッと笑う。

「とってもいいよ。カオリは何を着ても似合うね」
「わぁ。ミック、ありがとう」

そう言ったのは、もちろんミックの本音ではあったけれど、撩をからかうためでもあった。
そして、香のカワイイ笑顔をもらったミックは、ふと撩を振り返ると、機嫌がよろしくないようで、容赦なくギロリと睨まれ「早く出てけよ」と低い声でボソッと呟かれたのだが、それだけではなく、撩の服の間からこっそりとパイソンが覗いていたのを知っているのはミックだけで、それを見るとギョッとして「ちょっと待てっ。もう帰るからっ」と息を詰めて慌てて出て行ってしまった。

その後、外に出たミックが「ったく、リョウのやつ」とブチブチ愚痴を言っていたのは言うまでもないが、それでも今の撩を見ると、どこかで笑いたくなってくる。
それほど、今の撩は感情を外に出るようになった、ということで、それがどこか嬉しいミックだった。

「あれ。ミックったら何も頼まずに行っちゃったわ」
「忙しかったんじゃねぇのか?」

あれ?と首を傾げる香に撩はしれっとそう告げたが、内心はフンとふんぞり返っていた。


―――とまぁ、そんなこんなと色々あって。
そして、バイト最終日が来た。

すっかり常連さんとなった女性客は帰り際、美樹と出てきた海坊主に最初はビクついていたけれど、スイーツを作ったのが海坊主だと知れると、妙な親近感が沸くようで、すぐに親しげに話し出し、海坊主の方が驚いたぐらいだった。
そして、2人に御礼を言い、その後、香を抱きしめて、本気か冗談か、告白までしてくる女性もいて、香も驚いた。

「あの、あたし、女、なんですけど・・・?」

香がドキドキしながらおそるおそる言う。

「知ってます・・・。でも、香さんがあまりにもスタイルが良くてカッコ良すぎて、笑顔が素敵で・・・好きになってしまったんです。・・・でも、諦めます。彼氏がいるみたいだし」
「えっ・・・?!」

香の顔がボボボ、と一気に真っ赤になり、あわあわと慌てている。

「あ・・・あの・・・」
「いいんです。気にしないで下さい。またこんな素敵なイベントがあったら来ますね。終わるのがもったいないです。普段も出したらいいのに、ってちょっと思っちゃいました。また来ますね」

そう云われて苦笑しながらも複雑な顔をする海坊主と美樹だった。
ちょっと寂しそうな表情をしてからなんとか笑みを浮かべて客が帰っていったのを見て、香の心中もちょっと複雑だった。

それを打ち消すように、閉店後、キャッツの中でちょっとした打ち上げをして、改めて、海坊主が作ったスイーツを食べた香はその美味しさに「うーん」と舌鼓を打った。

「海坊主さん、やっぱりすっごく美味しいっ。ホント、毎日でも食べたいくらい美味しいわ」
「・・・・・・」

ポポ・・・と頬が少し赤くなった海坊主に美樹がすかさず突っ込む。

「あら、ファルコンったら香さんに褒められて照れてるのね?」
「・・・フン」

美樹と香は2人で顔を見合わせてクスクスと笑いあう。
そして、そこには裏方として海坊主の元、バイトとして働いていた学生達の姿もあり、1人の男が香に話しかけてくる。

「あの・・・あまり話す機会がなかったんですけど、おれ・・・」
「香、これも食うか?」

話している途中で、離れたところから海坊主が別のスイーツを持ってきたようで、香に話しかけてくる。

「食べるっ!・・・あ、ごめんなさい。話してる途中で。あの、何でしょう?」
「あの、いえ・・・何でもないです。これも・・・あ、これ、おれが作ったんですけど、これも食べてもらえますか?」

それもスイーツで美味しそうで、香はパッと顔を綻ばせる。

「ありがとうございます。ぜひ、いただきます」

笑顔で応えてそれを受け取る。
そして、「じゃ、あたし、行きますね」と海坊主の方へ行ってしまうのだが、その後ろ姿をポーッとした顔で見つめていたことを香は知らない。
海坊主のところへ来た香に、美樹がススーッと近づいてきて、香に耳打ちする。

「今、話していた男の子。このイベントを持ちかけてきた業者さんの息子さんなのよ。香さんのこと、ポーッと見てたみたいだけど?」

美樹の顔は楽しそうにワクワクして笑っていて、香は一瞬、?というように小首を傾げるが、パッと笑顔になる。

「そうそう。あのね、これ、食べてってもらったのよ。これも美味しそうだから嬉しくて」

ウフフ、と笑う香に、美樹は思わず顔を顰める。

「あれ、美樹さん?」
「香さん?それだけ?」
「??そうだけど。それがどうかした?」
「・・・ううん、何でもない」

確かに、業者の息子は香に気がある顔をしていた。
てっきり告白でもしたのか、と思っていたのだが、云えなかったのか、天然の香がそれと認識しなかったのか?
チラとその息子を見ると、なんとなく頭を垂れてしょげているように見えて、あぁ、残念ね、と美樹は何ともいえない気分になる。
香を見れば、何とも美味しそうにスイーツにパクついていて、頬に手を当てて、「うーん、美味しいっ」と海坊主と話している。
はぁ、と息をついて

・・・香さん、貴女、自分のことを解ってなさすぎよ?
これだけ色んな人を惹きつけておいて、スルーするなんて。
まぁ、これもすべてあの男性(ひと)が悪いのよね。

と、イベントの間、毎日ちゃんと支払をして帰った、裏社会No.1の男を思い浮かべる。
次に来たら、私がビシッと言ってやらなきゃ、と美樹は妙な決意をして、うんうん、と1人、頷いていた。

キャッツで行われたささやかな打ち上げも終わり、大満足で家に帰った香は、テーブルに撩が用意したシャンパンが置いてあるのを見て驚く。

「え、撩?!これ・・・」
「あぁ、これはおまぁが無事にキャッツのバイトを終わらせたお祝い。飲むだろ?」
「うん、ありがとうっ」

撩に勢いよく抱き着いて、でも、片手にはシャンパンを持っていたので、もう片方の腕でしっかりと香を支える。
シャンパンをテーブルに置いて、改めて、香を抱き留め直して「お疲れ様」と、香の耳元で囁き、擽ったそうに身体を捩る香を優しく抱き上げたまま唇を重ねた。
しっかりと合わせて、何度も角度を変えて重ねては、吸ったり啄んだりして、もう遠慮することのない愛しい女の唇と身体の感触を楽しむ。
珍しく、撩が作ったという軽い夕食を取った後、シャンパンで乾杯して、バイトを終えたことを祝った。

「うーん、美味しいっ。ありがとう、撩。嬉しい」
「あぁ、まぁな。おまぁも頑張ってたし、特別にな」
「うん」

撩が香の腰を抱いて寄り添って、顔を見合わせると、キスをする。
離れてから、ふと香が撩を見上げて視線を合わせた後、その視線を落とす。
それに気づいて撩が優しく問う。

「どうした?」
「うん、あのね・・・」

香は小さな声で、先ほどキャッツで客に告白されたことを伝える。
すると、撩はふぅ、とため息をついた。

「やっぱり・・・」
「え?何、やっぱりって」
「おれ、言ったよな?女にまで好かれるなよって」
「・・・あ、そういえば。・・・でもっ、その時は、まさかそんなことになるなんて思ってもいなかったし」

香が焦っていると、撩は呆れる。

「だから、おまぁは・・・」
「あたしは?なに?」

香は不安そうな目で撩を見上げる。
それを受けた撩はフッと笑んで、香の髪を優しく撫でる。

「・・・天然だってんだよ」
「天然?そうかな」
「そうだよ。・・・ところで、おまぁは知ってたのか?客として来てた女達がおまぁのこと見てたってこと」

香は撩をチラチラと見ると小さく頷く。

「・・・知ってた。けど、それは、あたしがこんな恰好してるのが珍しいから見てるんだ、とばっかり思ってたから・・・」
「・・・ま、そんなことだろうとは思ってたけどな」

撩が苦笑して言うと、香はキョトンとして撩に笑みを浮かべた。

「えー、撩ったら何でも解るのね」
「まぁ、おまぁのことだったらな」

そう言うと、香の頬は朱に染まる。

「撩・・・」
「だから、結果的にその娘のことフッたことになっちまうかもしれないけど、あんまり気にすんなよ。大体、女ってのは切り替えの早いもんなんだから、その娘もすぐに元に戻るだろ」
「うん・・・そうだといいけど」
「おまぁが気にすることじゃないさ」
「うん、ありがと。撩」
「あぁ」

髪を撫でていた手を耳へと滑らせて、頬に触れ、それを撫でる。
すると、香が擽ったそうに肩を竦めてみせた。
そして、シャンパングラスをさり気なく撩が取り上げて、それをそっとテーブルに置いた。
その撩の動きを見ていた香は、撩を見上げてふわりと微笑んで、撩の服をキュッと掴む。
そして、それを合図に撩が優しい目の中に甘い光を湛えて、香を見つめ、また、手でそっと香の頬を撫でる。

「んっ」

今度は擽ったそうな甘い吐息を漏らし、それにクスッと撩が笑うと、その手を耳にかけて顔をくいっと上に上げさせ、香が少し背伸びをする形にして、撩が香を腰を支えて、顔を近づけて―――

「やっと、思う存分、触れられる―――」

と、撩が低く囁き、甘く、深い、キスから、もう遠慮することなく身体に触れられる、激しくも甘美な時間が始まった。







終わってみれば、大盛況で終わったキャッツ初のイベント。
話を持ち出した業者もキャッツに来るなり大喜びで興奮していた。
これには、バイトとして働いていた業者の息子の反応も大満足だったこともあるのだろうけれど。

そして、元々の交換条件だった珍しいコーヒー豆を仕入れる、という話だが、気を良くした業者が、普段は決まった豆しか仕入れないのを、予定していたよりも色々な豆を仕入れてくれる、とのとこで、だったら、今度は「コーヒー祭り」でもやったらどうだ、とまたしてもイベントを持ち掛けられ。
今度は海坊主は美樹と顔を見合わせてニヤリと笑う。

「その話、ノッた」

と業者と握手をする。
そして、美樹はというと―――。

・・・今度はコーヒーだから、たぶん男性の方が多め・・・かしら。
そしたら、今度は、香さんにはメイド服とまではいかなくても、白シャツと黒スカートで、女性としての魅力を発揮してもらいましょうか。
あぁ、楽しみねvv

と、すでに、次のイベントでも香がバイトに入ることが決定事項になっていて、色々考えては楽しそうにウフフと想像して笑っていた、とか―――。





++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

<あとがき>
大変、遅くなりましたが、5周年記念SSでしたっ(汗)
香ちゃんが大活躍(してたかな?)のお話、いかがだったでしょうか?
香ちゃん、カッコ良く描けてるかしら??
すみません、撩ちゃんがあまり出てきていない・・・???
あわわ、どうもすみませーんっ(>_<)
しかも、撩が女性相手に妬く、という普段なら絶対にあり得ない行動をとってます(笑)
あの、あくまで実梨の妄想ですので・・・っ、すみませんです!
でも、私が描きたかったシチュエーションを描けたので、嬉しいです♪
香ちゃんはきっと男装してもとっても似合うと思うのですヽ(*>∇<)ノヤッホーイ♪
そして、そんな香ちゃんを見た女性の何人かはポーッとなっちゃうと思うのですvvv
そんな香ちゃんを出したいと思ったのですが、上手く描けてるかしら・・・?
撩が上手く妬けているといいのだけれど・・・(´艸`*)
そして、最後の美樹さんのムフフ笑いですが、もうすでに、また香ちゃんに手伝ってもらうことを想定して、色々と考えちゃってます(笑)
さて、どうなることやら~(´艸`*)
私の文才ではこれが精一杯で、どうもすみませんでした(>_<)
ちなみにタイトルは『猫=キャッツ、甘=スイーツ、祭り』というそのまんまなタイトルになりました・・・(^^ゞ
そんなこんなで、UPするのもこんなに遅れて、おまけに駄文になってしまって本当にどうもすみませんでしたm(__)m
・・・と、ゆるーい当サイトではありますが、これからも、こんな駄文を読みに来て下さったら小躍りして喜びます(≧▽≦)
まったり更新ではありますが、今度は6周年記念SSを描けるようにまったりとではありますが、頑張って描いていこうと思いますので、どうぞ、よろしくお願いします☆
最後まで呼んで下さった皆様、どうもありがとうございましたvvv

【 2014/08/10 (Sun) 】 EVENT | TB(-) | CM(0)
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撩&香の一コマ♪
プロフィール

実梨

Author:実梨
シティーハンターが好きで、二次創作を始めました(^^ゞ
カッコいいリョウと可愛い香ちゃんを目指して、日常の色んな2人を描いていけたらいいな、と思ってますv
初心者なので、まだまだ未熟で駄文ばかりではありますが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです♪

更新履歴
・ 8/ 24 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 7/ 18 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 6/ 16 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 4/ 22 MEMOに拍手御礼(お待たせしてすみませんでした)
・ 4/ 17 遅ればせながら香ちゃん、お誕生日おめでとうvv
・12/ 7 サイト6周年vホントにどうもありがとうございますvvv
・11/ 13 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・11/ 2 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・10/ 19 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 8/ 10 EVENTに5周年記念SS(後編)をUP&MEMOに拍手御礼
・ 8/ 4 EVENTに5周年記念SS(前編)をUP(今更ですみませんっ)
・ 7/ 13 MEMOに拍手御礼
・ 7/ 2 NOVELをUP
・ 6/ 1 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 5/ 23 NOVELをUP
・ 5/ 5 MEMOに拍手御礼
・ 4/ 10 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 3/ 31 香ちゃんお誕生日おめでとうvv
・ 3/ 26 撩ちゃんお誕生日おめでとうvv
・ 3/ 23 NOVELをUP
・ 3/ 14 MEMOに拍手御礼
・ 3/ 2 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 2/ 19 NOVELをUP
・ 2/ 10 SSSをUP
・ 2/ 1 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 1/ 22 MEMOに拍手御礼
・ 1/ 10 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 1/ 5 どうぞ2014年もよろしくお願いしますvNOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・12/ 31 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・12/ 29 MEMOに拍手御礼
・12/ 25 NOVELをUP
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・12/ 15 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・12/ 7 サイト5周年~♪ホントにどうもありがとうございますvv
・11/ 28 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・11/ 18 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
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