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託して、守って、愛されて























「・・・り・・・おり」
「ん・・・っ・・・あれ・・・」

心地よい微睡みから目を覚ますと、あたしは・・・アパートにいた。
アニキと住んでた頃の、今はもう取り壊されている、あのアパートに。

「あれ、なんで・・・?」

不思議に思って何度か瞬きしていると、ふいに声をかけられる。

「香、こっちだ」
「え?」

・・・この声は・・・

一瞬、身体が固まる。
だって、この声は・・・。
今はいるはずのない・・・・・・アニキの声。

でも、聞き間違えるはずがない。
他の誰でもない、あたしが。
・・・ゆっくりと振り返る。

そこには、あの頃と同じように柔らかく笑っている、あたしの大好きなアニキがいた。

「香。お前、何、ボーッとしてるんだ。大丈夫か?」

アニキがフッと笑みを浮かべる。
でも、あたしは1人、この状況についていけずに、キョロキョロと周りを見回す。
あれ、撩がいない。

「えっ?なんで・・・。アニキが・・・。それに、この家、もう、アパートは取り壊されてるのに、なんであたし達がいた時のままであるの?撩は?いないの?」

アニキを質問攻めにするあたしに、アニキは、ははっ、と苦笑する。

「落ち着けよ、香。これは夢なんだ」
「・・・夢?」
「そう、夢だ。お前のな」
「・・・あたしの?」

驚くあたしに、アニキはメガネをずりあげて、あぁ、と頷く。

「あたしの夢で、アニキが生きてるってことは・・・あたしはまだハタチになってない・・・の?」

え、それって・・・。

また、あの悲しみを経験するの?
アニキがいなくなる悲しみ。
しかも、あたしの誕生日に。
すぐに撩の相棒になったからバタバタしたけど、それでも、胸がぽっかり空いたような、胸が潰れるような、あんな想いを、また、するの?
しなきゃいけないの?
もう、アレを経験するのはイヤだよ、アニキ。

ちょっとパニックを起こしながら眉を寄せて、目には涙をうっすら浮かべて、恐る恐る訊くあたしにアニキは静かに首を振る。

「いや、お前はもうとっくにハタチを越してるし、撩のことも覚えてるだろ?」
「あ・・・・・・うん。そうだね。あたし・・・ちゃんと撩のこと・・・解ってる。覚えてる」

ハッとした。

あ、よかった。
あたし、ちゃんと撩のこと覚えてるし、今、あたしはCHとして撩と仕事をしてるんだ。
ホッと胸をなでおろす。

「お前は『今』のお前なんだ。今の香は、撩と2人でCHであり、プライベートでも撩のパートナー、だろ?」
「え・・・う、うん・・・///」

―――ドキッ。

胸が一瞬、大きく跳ねた。
アニキに、撩のパートナー、と云われて、アニキに認めてもらったみたいで嬉しくて。
でも、同時に妙に気恥ずかしくなって、俯いてもじもじしながらチラとアニキを窺うと、呆れたアニキと眼が合った。

「何を今さら照れてるんだ。もう、とっくに解ってることだろ」
「え?アニキ、知ってるの?!なんで?!」

あたしが目を見開いていると、はぁ、とため息をついたアニキがとりあえず椅子を勧めてきた。
ストン、と座ると、コポコポと番茶を淹れてくれて、そのいい匂いが香ってくる。
当時、あたしが使っていた湯呑みを目の前に置いてくれる。
湯呑みを持つと、熱いくらいで、でも、その熱さが今はちょうど良くて、あたしは、両手で湯呑みを持って手を温めていると、アニキがあたしの向かいに座り、それを飲みながらニヤリと笑って話し出す。

「お前がおれのとこに来るたびに逐一報告してくれてるからだろ?」
「え・・・、あ」

あたしがアニキのお墓参りで報告してること、ちゃんとアニキに伝わってたんだ。
それが解ると、なんだか嬉しくなって、えへへ、と頬が緩む。

「そっか。ちゃんと伝わってたんだ」
「あぁ。だから、これからも、ちゃんと伝えろよ」
「うん。解った」

アニキが優しく目を細めて微笑う。
それから、あたしはアニキに逢えて嬉しくて、ついつい、今までのことを話して聞かせた。
仕事のこと、いつもの面々のこと、冴子さんのこと・・・そして、撩のこと。
アニキは、あたしの話を「あぁ」とか時折、相槌を打ちながら聞いてくれた。

「そっか。じゃ、撩とも仲良くやってるんだな」
「そ・・・そんな仲良く、とかじゃないけどっ・・・まぁ一応は・・・///」
「現に今だって、撩の腕の中じゃないか」
「・・・ええっ?!」

今のあたしの状況をズバリ言い当てたアニキに、あたしが慌てたのは云うまでもない。
確かに、あたしはいつもの通り、撩の腕に抱かれて眠っているわけだけど。
ふとアニキを見ると、何を今さら、とでも言うように、暢気にコートの裾でメガネを拭いてるし・・・。

「や、やだ。そんなことも解っちゃうの?」
「あぁ、まぁな」
「えぇぇ・・・っ」

あたしは恥ずかしくなって、顔が赤くなっていくのを感じた。
アニキは、そんなあたしを見てクスッと笑い、それから、あたしに向き直った。

「香」
「なに?」

まだ、顔を赤くしたまま尋ねるあたしに、アニキはフッと優しく微笑う。
あ、この笑顔、あたし好きなんだよね。
アニキと目が合うと、メガネの奥の目がふと細まり、そして・・・。

「誕生日」
「・・・え?」

あたしが瞬きすると、アニキはプッと吹き出す。

「お前、今日、誕生日だろ?」
「・・・あ」

今気付いたあたしに、アニキはやっぱり優しく眼を細めた。

「香、誕生日おめでとう」
「・・・アニキ」

一瞬、目を見開いてアニキをじっと見つめる。
優しい声で云われて、胸がギュゥゥと締まる。
パチパチと瞬きをするうちに、胸が一杯になって、溢れるものがあった。

あの、優しい声で。
メガネの奥の瞳を細めて。
いつでも安心する雰囲気で、いつものアニキで。

―――もう二度と云われることはない、と・・・思ってた。

でも、例え夢だとしても、アニキから云われて。
すっごく、すっごく嬉しくて。


ありがとう。


そう言いたいけれど、その前に目に涙が浮かんで、アニキが滲んで、1つ、こぼれ落ちていく。
1つ流れ落ちたら後は止まることを知らずに次から次へと流れ落ちていく。

アニキは困った顔をしながら、あたしの頭を撫でてくれる。
それは、昔から同じこと。
あたしが泣いたら、よくそうしてくれて、その撫でてくれる手が優しくて、あたしは余計に泣いてた。

そう思ったら、やっぱり涙が止まらなくて、子供みたいにしゃくり上げながら泣き出した。
すると、アニキがそっとあたしの顔を胸に押し付ける。

「・・・泣くなよ、香。お前に泣かれるのが一番キツい」
「だって・・・だって・・・ひっく・・・」

あたしはアニキの服をギュッと掴む。
変わらず頭を撫でながら

「何だよ、香。お前、いつからそんな泣き虫になったんだよ」
「泣き虫じゃないよ。いつもは泣かないもん」
「じゃぁ、なんで・・・」

アニキが戸惑う。

「アニキじゃない。アニキが泣かしてるんじゃない」
「・・・おれか?」
「そうよ、アニキよっ」
「そうか・・・そりゃ、悪かったな」

そう言って、また微笑う気配がして、今度はあたしの背中を擦ってくれて時々ポンポンとあやすように軽くたたく。
それがすごく優しくて、ちょっと落ち着いてきたあたしは、くっついているアニキの匂いを吸い込む。

・・・あ。
アニキの匂いだ。

それが分かると、ほわんと胸が温かくなり、笑みを浮かべるほど落ち着きを取り戻してきた。

「・・・ありがとう、アニキ」

今のは慰めてくれたお礼。

「・・・落ち着いたか?」

おそるおそる訊いてくるアニキに、あたしは微笑むとアニキから離れて頷いた。

「うん、落ち着いた。アニキが言ってくれたことが嬉しくて、涙が出てきちゃった」

照れ隠しに笑うと、アニキもホッとしたように息を吐いた。
目も鼻も赤いけど、涙は引っ込んだから顔を上げてアニキを真っ直ぐに見た。

「アニキ」
「なんだ?」
「ありがとう」
「?」

アニキは今の言葉の意味が解らなかったみたいで、眉を寄せて怪訝な顔をしている。
にこっと笑ったつもりだったけど、実際には泣き笑いみたいな顔だったかもしれない。
それでも、アニキにちゃんと言いたかったから、声が震えないようにお腹に力を入れる。

「誕生日。お祝いしてくれたでしょ?今」
「あ・・・あぁ、そのことか。当然だろ?兄が妹の誕生日を祝うのは」
「うん」

アニキは当然だ、ときょとんとしている。
あたしが嬉しくてはにかむと、アニキがニヤリと笑う。

「アニキ?」

あたしが訊くと、アニキは。

「・・・で?撩は?」

とあたしに訊いてくる。

「え?」
「だから、撩はどうなんだ?」
「撩?撩がどうかした?」

あたしは訳が分からなくて、?マークを頭にいっぱいつけてアニキに問い返す。
すると、アニキはプッと吹き出して、ははっ、と笑う。

「お前は相変わらず鈍感だな」
「なっ・・・何よ。ちょっと分からないだけじゃない」
「それが鈍いっていうんだよ」
「・・・アニキのバカ」

プッと頬を膨らませるものの、事実、アニキの言っていることが分かっていないので、悔し紛れにボソッと呟くと、アニキはさらに笑い出す。

「もう、何なのよ?撩が何?教えてよ、アニキ」

痺れを切らしたあたしが訊くと、アニキはなんとか笑いを収めて答えをくれた。

「撩はもうお前に言ったのか?」
「?何を?」
「誕生日の祝いの言葉だよ」
「あ・・・」

そういえば、撩からはまだ聞いてない。
今日になるちょっと前から撩があたしをその・・・求めてきてくれて・・・なんか言ってたような気もするけど、正直、撩から与えられるものに、その・・・感じ、ちゃって、それどころじゃなくて・・・あんまり覚えてなかったりする。
でも、それでも、おめでとう、って聞いた覚えはない・・・ような気がする。

「ううん、云われてない・・・かも」

かぁぁ、と真っ赤になってしどろもどろに答えると、アニキが苦笑していて、さらに赤くなる。

「愛されてるんだな、香」

唐突にアニキに云われて「ええっ?!」と焦るあたし。

「な、な、な、何言って・・・アニキ・・・?」
「良かったな、香」

アニキはそう言って、優しく笑みを浮かべた。
うわっ、恥ずかしい!
と思って、恥ずかしさはもちろんあったけど、面と向かって撩とこうなったことを改めて祝ってくれたことが嬉しくて。
嬉しさが勝ったあたしは、また涙が溢れそうになるのを慌てて拭う。
そして、頷くのが精いっぱいだった。

「・・・うん。ありがと、アニキ」

アニキは、ふぅ、とため息をつくと、安心したようにニヤリと笑った。

「やった」

と小さくガッツポーズをする。

「え?」

その意図が分からずに首を傾げると、アニキが続ける。

「初めて、撩より先にお前に誕生日を祝えたからさ」
「アニキ・・・」
「あの日も・・・お前にちゃんと言いたかったんだけど・・・云えなかっただろ?」
「!」

思わず息を呑む。
アニキを見つめる。

「それが心残りでだったんだ。・・・まぁ、それとは別に、お前に言わなきゃいけないこともあったんだけど・・・」

アニキが悲しそうに、寂しそうに微笑う。
それがあたしの胸を突く。
アニキの想いがあたしの中にスーッと入ってきて、心臓を鷲掴みにされたようにキュゥゥと痛くなり、それと同時に堪え切れず溢れてくるものがあった。

「アニキ・・・」
「あ。でも、今、云えたからな。ひとまず安心だ」

自分を見つめるあたしに気付いたのか、アニキは安心させるように微笑む。
その表情を見て、少しずつ心が温かくなり、それが身体全体に広がってホッとする。

そして・・・。
あたしは、アニキが今言ったことが何なのか、なんとなく解ったような気がした。

『それとは別に、お前に言わなきゃいけないこと』

それは、たぶん・・・

「あたし・・・知ってるよ?」
「香?」

アニキが目を見開く。

「あたしとアニキのことだよね。アニキがあたしのホントのアニキじゃないってこと・・・じゃないの?」
「香・・・?やっぱり・・・知ってたのか?」
「うん。中学の時に知った」
「・・・・・・」

あたしは一瞬、ちょっと俯いて自嘲気味に笑んだけれど、すぐに顔を上げた。

「―――でもっ!あたしはアニキが大好きだし、アニキはあたしの大事なアニキだよっ!今までも、これからも!」
「香・・・」

アニキがじっとあたしを見つめる。
手をぎゅっと握りしめてないと泣いてしまいそうだった。
それをなんとか堪えて、なるべく笑顔になるように意識した・・・けれど、ちゃんとそうなっていたかどうか。
それでも、あたしは続けた。

「あたし、とっても幸せだよ。だって、アニキがあたしのアニキで、アニキが撩のパートナーだったおかげであたしは撩と知り合えた。今はあたしが撩のパートナーになって。すっごく幸せだよ、アニキ」

すると、アニキは顔をくしゃっとして微笑んで、あたしから身体ごと逸らした。
黙ってメガネを外して、コートで拭いている。
そのアニキにまた続ける。

「だから。・・・それを知った上で、あたしはアニキの妹なんだからね!アニキはあたしのお兄ちゃんなんだからね!」
「・・・・・・あぁ」
「解った?!」
「・・・あぁ」
「聞こえない!」
「・・・解ったよ」
「ホントに解った?」
「あぁ。ホントだ」

苦笑するアニキに、あたしの気持ちを解ってほしくて真剣にしつこく訊いた。
それから、じーっとアニキを見る。
メガネの奥の瞳を見る。
すると、アニキも優しい瞳であたしを真っ直ぐに見つめてくれる。

・・・うん。
やがて、あたしは1つ頷いた。

「よし」

笑ってそう言うと、アニキは苦笑する。

「よしってお前・・・。何を偉そうに」
「いいの」

アニキはきっと、解ってくれたと思うから。
あたしがフンと胸を張ると、アニキがクスッと笑った。

「それにしても、久々に聞いたな。香がおれのこと『お兄ちゃん』って呼ぶの」
「あ、そういえばそうかもね」

そう言って、2人でクスクスと笑う。
それから、アニキがあたしに向き直る。

「香」
「ん?何?アニキ」

アニキはじっとあたしを見つめてきて、あたしもアニキから眼が離せないでいた。

「これからも、撩と仲良くな」
「うん・・・」

そう頷いたものの、なんだかイヤな予感がしていた。
胸がざわざわとざわめく。
でも。

「・・・アニキ?」
「撩とだったらお前らがじいさん、ばあさんになるまで一緒にいてもいいからな」
「なっ・・・!何っ・・・」

さっきまでと一転、かぁぁ、と耳まで真っ赤になる。
それって・・・。

「撩は戸籍がないから結婚はできないが、2人で・・・。2人が誓いあえば、その時点でもう一緒だ。だから―――」

ただ、息を呑んでアニキを見つめる。
胸がドキドキする。
身体全体が心臓になったかのように胸の鼓動が大きく響く。

「撩のこと、よろしくな。香」
「アニキ・・・」
「撩に何かされたらすぐに報告するんだぞ」

アニキが悪戯っ子のようにニヤリと笑う。
あたしは何だか擽ったくて、同じようにクスッと笑ってウインクをする。

「うん。解った。すぐに言うね」

撩があたしのこと、大切にしてくれてること、大事にしてくれていること、ちゃんとアニキも解ってるから。

「それにしても―――」

そう言って、アニキが徐に前髪を掻き上げる。
そして・・・あたしの額を指で弾いた。

「いたっ。痛いよ、アニキ」
「バカ。照れてるんだ」

と顔を逸らす。

「ったーい。それに、何に照れてるのよ?」
「それは、色々とだ。色々と」

と言ったものの、何ともいえないアニキの表情を見れば、それが嬉しいのが解ってあたしはクスクス笑う。

「なんか照れてるアニキ、可愛いな」
「なっ・・・そんなこと云われても嬉しくないぞ」

あたしがボソッと呟いた言葉もしっかり耳で拾っていたアニキがムッとした顔をするものだから可笑しくなったけれど、今度は笑わないように堪えた。

「嘘だよ。ありがとう、アニキ」

あたしがはにかむと、アニキが向き直ってあたしに真剣な眼差しを向ける。

「・・・こんなこと言ってくれたのは初めてだな」
「うん・・・そうだね。でも、ずっと前に・・・アニキがいなくなった時に諦めてたから言えて嬉しかった。言ってもらえて嬉しかった」

すると、アニキの目が穏やかに細まり、優しくなった。

「おれも・・・同じだ」
「アニキ?」
「おれも、お前が妹で幸せだった。香、お前を妹と呼べて、一緒に過ごせて・・・おれは幸せだった」
「アニキ・・・」

あたしはアニキの告白に目を丸くする。

「・・・お前を連れてきてくれた親父に感謝、だな」

そう言って、アニキはクスッと照れくさそうに微笑んだ。

「うん・・・」

胸がほんのり温かくなったあたしは、照れを隠すことをしないで最高の笑顔をアニキに向けた。

そこで、フワッと風が吹いたかのようにアニキの身体が揺れて薄く透けだし、ズキンと胸が冷えてザワザワしだす。

「アニキ・・・?」

声が震える。
アニキの服を掴もうと手を伸ばすものの、透けているので通り過ぎて掴むことができなくて、涙が溢れて頬を伝い落ちるのを拭うのも忘れて泣き叫ぶ。

「アニキっ!アニキっ・・・やだっ、いなくなっちゃやだよっ!」

それを困ったような、でも、見守るような優しい眼で見るアニキ。
あたしと目が合うと、フッと軽く息をはく。

「心配するな、香。これはお前が目覚めそうになってるだけだ」
「目覚める・・・?」
「忘れたのか?これはお前の夢なんだ」
「あ・・・」

ハッとした。
その時、あたしの背中を優しく撫でる手の感触があった。
それが撩だと解って―――。
アニキが楽しそうに目を細めて笑う。

「お前のパートナーがそろそろ構ってほしいって言ってるぞ」
「撩・・・」
「まぁ、概ね撩自身、無意識に妬いてるってとこじゃないのか?」
「撩が?妬く?アニキに?」
「そう、おれに」

それを想像してクスクス笑う。

「ヘンなの。撩はあたしがアニキとこうやって話をしていることも知らないのに」
「いや、分からないぞ?何せ撩のことだからな」

アニキの瞳にからかいの色が浮かぶ。

「それに、撩がアニキに妬くのもヘンよ。だって、アニキはあたしの兄貴だし」
「・・・あぁ、撩もなかなか苦労しそうだな」

・・・お前ももうちょっと男の機微が解れば撩も苦労しなくてすむのにな。

ボソッと呟いたアニキの声はあたしには届かず「え?」と訊き返したものの、なんでもない、と躱されてしまった。

「まぁ、真意は分からないけど、そうだったら楽しいなって思っただけだ」
「うん、もし、そうだったら・・・あたしもちょっと嬉しいな」

すると、アニキは苦笑する。

「まぁ、それはそれで兄としては少々複雑ではあるがな」
「そうなの?」
「あぁ・・・ってそんなことはいいから、もう、おれは消えるぞ」
「待って、アニキ」

ふとあたしを見る。

「なんだ?」
「また・・・また、あたしの夢に来てくれる?」

縋るようにアニキを見つめるあたしに、アニキは「あぁ」とはっきりと頷いてくれた。

「また、な」
「うん、絶対だよ?」
「あぁ」
「とりあえず、今日、起きたらアニキのお墓参りに行くから」
「そうだったな」

アニキが肩を竦める。

「絶対、また来てよ」
「解ったって」

アニキは苦笑した後、あ、とふと気づいたようにあたしを見る。

「香」
「なに?」
「撩に伝えてほしいことがあるんだが・・・」
「撩に?いいよ?」
「そういうことは、ちゃんと目を覚ましてから云え・・・ってな。本人が寝てたら意味ないぞ、と」
「うん?・・・解った。撩にそう伝えればいいの?」
「あぁ、それでアイツなら解るだろうからな。頼んだぞ」
「うん」

あたしは訳が分からないながらもアニキと撩で通じるところがあるのだろうと思い、頷いた。

「じゃあ、今度こそ、またな。香」
「うん、またね、アニキ」
「これからも撩と仲良くな」
「うん」

笑って頷くと、アニキは優しく微笑んで、今度こそスーッと静かに消えていった。
アニキの面影がなくなって、アニキと過ごしたアパートにあたし以外、誰もいなくなったのを見届けてから、あたしはゆっくりと目を開けた。










****










香が目を開けると、撩はすでに目を覚ましていて、香の眼尻をそっと拭っていた。
なんだかよく分からないまま香が一瞬目を閉じてから撩を見ると、真っ直ぐな瞳とかち合った。

「・・・泣いてたのか?」
「ううん。違うの」

香はふるふると首を横に振る。

「あのね?夢にアニキが出てきて、嬉しくてね。だから、嬉し涙よ」

香がふんわりと微笑むと、撩は「そうか」と呟くと、香の頬を愛おしげに撫でて、香の身体をふわっと抱きしめる。
目が合うと、撩も優しく眼を細めていて、香の心がトクンと甘い痛みとともに心地よく跳ねる。

「槇村が出てきたんだ?」
「うん。ビックリしちゃった」
「なんか・・・言ってたか?」

何故かおそるおそる訊く撩に、香は思わず可笑しくなってクスクス笑いだす。

「なんでそんなにビクついてるのよ。別に撩がビクつくようなことは云ってなかったよ」
「そっか、よかった」

珍しく、あからさまにホッとしている撩を見て、なんだか新鮮さを覚えた。

「なんか、撩、ヘンなの」

と言ったところで、あ、と気が付く。
そういえば―――

「そういえば、撩にアニキから伝言があるの」

そう言うと、撩は怪訝な顔をする。

「槇村から?伝言?」
「うん」
「なーんかヤな予感がするのはおれだけか?」
「えー、そんな感じじゃないから大丈夫だよ。それに、あたしには解らないことだし」

香がきょとんとしていると、撩は内心で、おまぁは鈍いからな、とため息をつく。

「で?なんて言ってたんだ?」
「うん、あのね・・・?」

撩に秀幸からの伝言を伝えると、はぁ?と聞いていた撩だったけれど、何かに気付いたようにハッとして、チッと舌打ちをして前髪を掻き上げる。

「くっそー、槇村のヤツ。覚えてろよ」

と呟くと、ブツブツと何か呟いている。

「え?やっぱり撩にはあれで解ったんだ?アニキからの伝言」
「え?あ、あぁ・・・まぁ、な」

気まずそうに答えて香から目線を逸らす。
香が小首を傾げると、撩がそれを吹っ切るように香の頬に手を添え、唇を重ねた。

「んっ・・・」

深く重なり合った唇はすぐに互いの体温で温かく、熱くなり、2人の息も熱くなる。
何度も角度を変えて重なり合うそれは、舌も絡め出し、口の端から透明の液がつ、と伝い落ちていく。
それを吸って、甘噛みして、口内を蹂躙するように絡めとる。

「ちょ・・・りょ・・・ぅ?」

香がとろんと潤んだ瞳で撩を見やれば、男の眼をして自分を見下ろしている撩がいて。
ドキ、ドキ、と胸が1回1回大きく跳ねる。
その瞳に吸い込まれそうになって眼が離せない。

「・・・っんだよ・・・」

掠れた呟きによく聞き取れないながらも、香はその声音に鼓動が速くなっていく。
それから、首に吸い付いて、リップ音をさせながら何か所も痕を残す。
撩の息が荒いのに気付き、香の鼓動が大きく跳ねる。

「・・・はぁっ・・・んっ」

その後も、耳を甘噛みしたり、鎖骨に胸に痕をつけたりしている。
少し強引なところが自分を強く求めてくれているのだ、と嬉しくなるあたり、ぼんやりと、あたしって単純だなぁ、と思う。
それからも、撩は香に触れ、与えられる刺激にいちいち身体が感じて、ピクン、ピクン、と跳ねる。
撩の荒い愛撫にも香の身体が反応して、撩のものがナカに入り突き動かされるたびに、香もそれに反応する―――
そして。

「――――――ぁ・・・っ!」

小さく吐息をもらすと同時に上り詰める。

っはぁ、はぁっ、はぁっ

荒く息をはいていると、撩も同じように荒い息をはいて、香を抱き寄せる。

「りょ・・・」

まだ息が整わなくて名前を呼べないでいると、撩が悔しそうにしていて。

「・・・どう、したの・・・?」

そう香が問うと、撩はふいと視線を逸らす。

「・・・撩?」

小さく名前を呼ぶと、撩はそっぽを向いたまま。
もう、そう呟くと香は撩の頬に手をやり、ぐいっと自分に向けさせる。

「なぁに?どうしたの?」

まるで拗ねた子供のような撩にクスッと笑って、撩の髪を梳きながら頭を撫でる。
すると、撩は香の胸に顔を埋めて、もう一度「くっそー」と呟く。
よっぽど悔しいことがあったのだろうか。

「・・・何もかもお見通しってぇのが気に食わねぇ」
「それ、もしかして、アニキ・・・のこと?」
「・・・・・・」

香の質問に答えないあたり、図星だろう。
撩が可愛く見えて、クスッと柔らかく笑いながら、香が撩の頭を撫でる。

「なになに?」

興味津々で訊いてみると、香の質問には答えず、撩が香の柔らかな双丘の感触を楽しみながらボソッと呟く。

「・・・おれの方が早かったし」

その声は香にも聞こえたものの、まったくもって意味不明だ。
香は頭に?マークを飛ばして、撩に尋ねる。

「何が早かったの?」
「・・・香」
「うん?」

撩が香の顔を見上げる。

「・・・誕生日・・・おめでとう」
「・・・え?」

何の脈絡もなく云われた祝いの言葉に香の反応が一瞬遅れた。

「・・・あ、ありがとう」

ふと視線を感じると、撩が子犬のような眼で香のことを見上げていて、思わず頭をわしゃわしゃと撫でた。
撩が自分に甘えているようで、そんな撩が可愛くて、そして、云われたことに対してじわじわと嬉しさが身体にしみ込んで、顔をくしゃっとして嬉しそうに破顔した。

「ありがとう、撩!」

すると、撩もホッとしたように微笑む。
それから、ズルズルと這い上がってきた撩が香と目線を合わせて、優しく見つめてくる。
それは、穏やかで、優しくて、胸に甘い痛みをもたらす。
香は瞬きもできないで、目を逸らすこともできないで撩を見つめ返していると、撩の口許がクッと上がって、近づいてくる。
そして。

ちゅ。

触れるだけのキスをして、離れると、また触れてきて・・・。
そんなキスを繰り返す。
それは、撩の瞳と同じで、優しく、甘いキス、だった。

離れてゆっくり瞳を開けると、撩が悪戯っ子のように香を見つめていて、顔が熱くなっていくのを感じた。
そして、香を引き寄せて香の髪をクルッと弄っては離して、と遊んでいて、ふと思う。





―――話は今日の未明まで遡る。

31日を迎える少し前から香の身体を求めていて、香の誕生日を迎えた時はちょうど、肌を重ねて睦み合っていた時だった。
もちろん、その時は香の柔肌に触れることに、求めることに没頭してすっかり忘れていたけれど。
それから、香が絶頂を迎えてしばらくして、寝息を立て始めたのを見て、香の顔に貼りついた前髪をそっとどかして・・・。
寝顔を見て、フッと笑みを浮かべ自然に口から呟いていた。

「・・・HAPPY BIRTHDAY。香」

だが、その呟きは当然ながら寝ている香には届いてなくて、でも、それでもよかった。
香の寝顔が穏やかで幸せそうだったから。
起きてからまた言えば・・・。
そう思っていたんだけど。
香から聞かされた槇村からの伝言とやらに、ムッとした自分がいたのは事実だ。

確かに、ちゃんと香の眼が覚めてから云わないと、伝わらない。
香が寝ていたら、意味がない。
そんなこと百も承知だ。
でも、香の寝顔を見てたら無性に言いたくなっちまったんだから仕方ないだろ―――?





弄っていた髪から手を離すと、撩は香をもう一度見て、もう一度告げた。

「誕生日、おめでとう。香」
「・・・うん、ありがとう、撩」

何度だって云われたい。
何度云われても嬉しい。
まして、それが好きな男からだったら尚更だ。
香は何度だって嬉しくなって、笑顔で撩に抱き着いてしまう。

香はその嬉しさを表現するのに、撩に自分からキスをした。

「ありがとう。すっごく嬉しいっ」

頬がうっすら朱に染まっている香に、撩はその頬をそっと撫でる。

「あぁ」

そして、撩は香の柔らかな身体を引き寄せ、抱きしめた。

どれぐらい、そうしていただろうか?

「・・・・・・」

ふと香が顔を上げて撩を見た。

「・・・で、結局アニキは何て?」

どうしても気になる香は撩に詰め寄ると、撩がフイと顔を逸らす。

「何でもない」

結局、香が目を覚ましてから・・・つまり、今、ちゃんと伝えたのだ。
だから、今さら香に秀幸との内容は云わなくてもいいだろう。
・・・というか、言いたくない。

秀幸からの伝言を聞いて心が乱れて、香を抱くのに少々強引に事を進めてしまったのは事実だし、何より自分が秀幸相手に妬いたみたいで、すごく居心地が悪い。
苦虫を噛み潰したような顔をする撩に、香は首を傾げて見ていたが、撩が教えてくれる気がないことが分かると、諦めて気持ちを切り替えると、時計をチラリと見て、撩に声をかける。

「そろそろ起きなきゃ。アニキのお墓参りにも行きたいし」

香の口から『アニキ』という名前を聞いただけでムッとなる自分に撩は苦笑してしまう。
でも、今は拗ねていたくて、コロンと香に背を向ける。

「撩?」
「・・・飯の用意ができたら呼んで」
「まだ起きないの?」
「んー、あともうちょっと」

そのまま動かない撩にちょっと驚いた香だったけれど、そのうち、香が後ろでクスッと笑う気配がする。
撩の服を羽織り、ベッドの端に腰掛けると布団から見えている撩の髪に指を滑らせて優しく梳く。

「なぁに?拗ねてるの?」
「・・・拗ねてない」

ふて腐れたような声は、まるで小さな子供のようだ。
そんな撩の髪を梳く香の手が優しくて心地よくて、撩が目を閉じてされるがままになっていると、香がグッと顔を近づけて、撩の頬に優しく口づける。

「ご飯ができたら呼びに来るから、そしたら起きてね」

優しい声音で耳元で囁く香に撩が振り返ると、柔らかな笑みのまま撩を見下ろしていた。
香が悪戯っ子のような眼になる。

「今日は拗ねないでほしいなぁ」

チラと上目遣いで撩を見ると、撩もお返し、とばかりに悪戯っ子の顔になっていて。
香がキョトンとする。

「香ちゃんがキスしてくれたらそれ、直すけど?」

瞬きをする香は、仕方ないなぁ、と笑んで両頬に手を添えてキスを落とした。

「どう?」
「んー・・・ま、いいか」

香がクスクス笑うと、撩もクッと笑み、半身を起こす。

「ありがとう」

香が撩の頭を撫でると、撩は笑みを浮かべたまま素直にそれを受けた。

「じゃ、ご飯の支度、してくるから」

香が部屋を出ていくと、撩はフッと深い笑みをこぼす。
伸びをして立ち上がると、のんびりと香の後を追った。

それから、ご飯を食べ、出かける準備をして家を出る。
アパートの外に出ると、どこから飛んできたのか、何枚かの桜の花びらが舞っていた。

「わぁ、キレイね」
「あぁ。今が満開だからな」

香は他愛のない話の1つで、今朝に見た秀幸との夢の話をしていたら、今まではふつうに相槌を打って聞いていた撩の機嫌が何だか良くない方へいっているのに気付いた香。
驚いた表情になった後、何故か嬉しそうな笑顔を見せ、撩は眉を顰めた。

「なんだ?」
「ううん、何でもない」
「そんな顔、してないけど?」
「うん。でも、撩には内緒」

そう、撩には言えない、言わない。

「内緒?」
「そう、ヒミツ」

・・・アニキとの、ね。

香はフフッと笑うと、ふと空を見上げる。
今日の空は雲があるものの陽射しが眩しく、すっかり春の陽気だ。

―――ねぇ、アニキ。
アニキの言ったとおり、もしかしたら撩がアニキに妬いてるのかもしれないよ?
だって、アニキとの夢の話をしてたら機嫌が悪くなっていくんだもの。
アニキは複雑だって言ってたけど、あたしはやっぱり嬉しいな。
それに、拗ねた撩も見ることができたし。
撩には絶対に云えないけど、可愛いんだよ。

香はクスッと微笑うと、撩の腕に自分の腕を絡めて、撩が驚いたように香を見つめる。

「・・・ビックリした」
「ん?そう?ごめんね、ビックリさせて」
「なんか楽しそうだな」
「うん、楽しいよ」

香が顔を綻ばすのを、撩が眩しそうに目を細めて見守る。

・・・これからも、香自身はもちろんだけど、この笑顔も守れるようにしなきゃな。

ぼんやりと、でも明確な誓いを立てた撩に気付くはずもない香は、例年と違い、こんな笑顔さえ浮かべて本当に楽しそうだ。
いつもは、秀幸のところへ行くときは、もうちょっと神妙にしているのだけれど。

横目で香を見ながら、それでも香が笑っているならいいか、と思う。
秀幸のお墓の前に立つと、香がお花を供えて、そこに置いてある真新しい花を見て、優しく微笑む。

「今年も冴子さん、来てくれたんだ」
「そりゃそうだろ?あの2人は・・・」
「恋人同士だったんだからね」
「あぁ」

香がしゃがむと穏やかな笑みを浮かべてから、いつも通りに目を閉じて、長い間、手を合わせている。
一体、何を話しているのやら。

撩もふと秀幸の墓石を見る。
亡くなった年を見て、過ぎた年月の長さにふと目を細めて香を見る。

・・・槇村、お前との約束は今も違えることはないからな。
これからも、お前からの大事な『預かりもの』だったじゃじゃ馬娘は、おれが絶対に守る。
だから、そこで大人しく見てろ。

そして、ふと顔を顰め、内心、舌打ちをする。

・・・間違っても今日みたいに香の夢に出てくるなよ?
もちろん・・・おれの夢にもな。

秀幸に届くかどうかは解らないが、それでも念を押しておく。
それから、コートのポケットを探り、煙草を取り出し、1本咥えて火をつける。
紫煙を燻らせ、ゆっくりと煙を吐き出す。
その匂いに気付いたのか、香が立ち上がり、撩を見上げる。

「撩、煙草は吸わないでって言ってるじゃない。ここをどこだと思ってるのよ」
「いいじゃねぇか。相手は槇村なんだし」

しれっと言い放つ撩に、あのねぇ、と香が呆れる。

「アンタ・・・アニキを何だと思って・・・」
「それに、その方がおれが来たってアイツも気付くだろ?」

撩は香の言葉を途中で遮ってニヤリと笑い、ウインクをする。

「う・・・それは・・・」

そう言われるとそうかも、と否定できない香は、思わず目を泳がせてアタフタする。
目の前で慌てている香に撩はプッと吹き出すと、香の頭を引き寄せ肩を抱く。

「よかったな。槇ちゃんと色々話せて」
「うん・・・」
「・・・もしかして、話し足りなかった、とか?」

撩が香を覗き込むと、香はううん、と首を振る。

「今日は夢でもここでもたくさん話せて十分よ。また、話しに来るし」
「今も話したのか?」
「うん、もちろん」

香の笑う気配に撩もフッと笑みを濃く刻む。

「そうか。じゃ、行くか」
「うん」

香が秀幸のそれに向き合うと、優しく微笑んだ。

「アニキ、また来るから」

そして、撩と目を合わせると眩しそうに目を細めてキレイな笑顔で顔を綻ばせた。

「撩、行こう」
「あぁ」

香が撩の腕を取ると、ゆっくりと歩き出す。
それは、少しでも長く、兄と同じ空間にいたいからかもしれない。
撩もそれに倣ってのんびり歩みだしてから、ふと振り返ると、そこには穏やかな笑みを浮かべて、あのコートを着た秀幸が立っていて。
思わず息を呑んで撩が目を見開く。



―――香のこと、これからも頼んだぞ



忘れることのない、耳に馴染んだあの穏やかな優しい声が撩の耳に届く。

・・・なっ―――

撩が何も云わずに、動かずにじっと見ていると、笑みを浮かべたままの秀幸がそっと片手を上げてみせる。

「―――槇、村・・・?」

ボソッと呟いた撩に、香が「えっ?」と撩を見る。

「撩?」

小首を傾げている香を信じられない面持ちで見つめて、再度、視線を戻す。
撩の表情に香も眉を寄せると、撩の視線を辿っていく。
すると、そこは秀幸が眠っている場所で・・・。

そこにはもう、誰もいなくて、撩はまた、一瞬目を見開くものの、フッと笑み、香はやっぱり首を傾げる。

「ねぇ、どうしたの?急にアニキを呼んだりして」
「・・・いや、何でもない」

撩はしばらく秀幸が眠る場所から眼を離さずに見つめる。
真剣な瞳で向き合う。

―――あぁ、心配すんな。
香は、おれが必ず守るから。
おれの隣で笑っていられるように、守る。
だから、安心して見守ってろよ。

撩は心の中でそう話しかけると、くるっと振り向き、香の背中を押す。

「ほら、行くぞ。香」
「え、さっきは立ち止まったくせに、何なのよ、もう」

と言いながら、香は撩に押されてタタタ、と歩き出す。
撩が隣に並んで歩き出すと、撩が軽く腕を出し、香がそれに自分の腕を絡める。
そして、撩が徐に片手を上げた。

・・・またな、槇村。

互いに腕を組むのを自然にやっている2人の後ろから、優しい風が2人を撫でるように通り過ぎていく。



―――2人とも、これからも仲良くな



それを、メガネの奥の安心して細めた瞳で2人を見送りながら、秀幸は優しく微笑った。





+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

<あとがき>
2014年の香ちゃん誕生日SSですっO(≧▽≦)O ワーイ♪
誕生日、おめでとうvv香ちゃんヽ(*>∇<)ノヤッホーイ♪
すっかり遅れてますが、まぁ、それは毎回のことなので、軽くスルーでお願いします(笑)
いかがだったでしょうか?
今回は槇兄が登場してるし(*^^)v
いつもの2人はもちろんなんだけど、槇兄好きさんにも少しでも楽しんでいただけたら幸いです(*^▽^*)
槇兄も撩もみーんな素直なお話でほのぼのしてるかなー(*^^)v
主役は香ちゃんなので、香ちゃんが笑顔になれる話を・・・とvv
槇兄と香ちゃん、撩と香ちゃん、撩と槇兄。
この3組のやり取りも楽しんでいただけると嬉しいです♪
でも、やっぱり駄文になってしまい・・・ごめんなさいっ(^^ゞ
これからも、皆に愛されて、撩と仲良く愛し愛されて、槇兄に見守られながら、笑顔の絶えない香ちゃんでいてねvv
・・・ってそれを描くのは私かっ(笑)
これからも、ラブラブなRKを、ほのぼのなRKを描くぞーっ!!
最後まで読んで下さった皆様、どうもありがとうございましたvvv

【 2014/04/09 (Wed) 】 NOVEL | TB(-) | CM(0)
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撩&香の一コマ♪
プロフィール

実梨

Author:実梨
シティーハンターが好きで、二次創作を始めました(^^ゞ
カッコいいリョウと可愛い香ちゃんを目指して、日常の色んな2人を描いていけたらいいな、と思ってますv
初心者なので、まだまだ未熟で駄文ばかりではありますが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです♪

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・ 8/ 24 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 7/ 18 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 6/ 16 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 4/ 22 MEMOに拍手御礼(お待たせしてすみませんでした)
・ 4/ 17 遅ればせながら香ちゃん、お誕生日おめでとうvv
・12/ 7 サイト6周年vホントにどうもありがとうございますvvv
・11/ 13 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・11/ 2 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・10/ 19 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 8/ 10 EVENTに5周年記念SS(後編)をUP&MEMOに拍手御礼
・ 8/ 4 EVENTに5周年記念SS(前編)をUP(今更ですみませんっ)
・ 7/ 13 MEMOに拍手御礼
・ 7/ 2 NOVELをUP
・ 6/ 1 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 5/ 23 NOVELをUP
・ 5/ 5 MEMOに拍手御礼
・ 4/ 10 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 3/ 31 香ちゃんお誕生日おめでとうvv
・ 3/ 26 撩ちゃんお誕生日おめでとうvv
・ 3/ 23 NOVELをUP
・ 3/ 14 MEMOに拍手御礼
・ 3/ 2 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 2/ 19 NOVELをUP
・ 2/ 10 SSSをUP
・ 2/ 1 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 1/ 22 MEMOに拍手御礼
・ 1/ 10 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 1/ 5 どうぞ2014年もよろしくお願いしますvNOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・12/ 31 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・12/ 29 MEMOに拍手御礼
・12/ 25 NOVELをUP
・12/ 24 NOVELを2話分UP
・12/ 15 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・12/ 7 サイト5周年~♪ホントにどうもありがとうございますvv
・11/ 28 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・11/ 18 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・10/ 20 MEMOに拍手御礼
・10/ 5 MEMOに拍手御礼
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