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待ち合わせ -撩×香-

※これは『KISS KISS KISS』の話です。
一応、単独でお読みいただいても読めるように描いたつもりではありますが、もしかしたら「待ち合わせ -ミック×かずえ-」を読んでいただいてからの方がより解りやすいかもしれないです。
そんなんでもいいよー、という方は、お読みくださいませー☆

























カランカラン―――

「あーっ、もう!あったまくるーっ!!」

もうすぐ13時になろうとしている喫茶キャッツアイのドアをバンと開けるなりそう叫んで入ってくるのは絵梨子だ。

「・・・どうしたの?絵梨子さん」

絵梨子の迫力に遠慮がちに尋ねる美樹に、絵梨子は待ってました、とばかりにスツールに腰かけて、一気に話し出す。

「ちょっと美樹さんっ。聞いてくれる?!」
「・・・ええ」

それから始まった絵梨子の愚痴というか文句というか・・・は少しの間続いた。

「・・・・・・ってわけでね、その女ってのがさ、仕事はできないくせに、人にはあーだこーだって文句ばっか言うのよ。デザインのセンスだって全くないし。なんで、私があんな女の仕事場まで行かなくちゃいけないのよ!だいたい、向こうからこっちの仕事場まで来るのが普通じゃない。ねぇ、そう思わない?!」
「そ・・・そうね」

一気に話す絵梨子の迫力にすっかり圧倒された美樹は隣の海坊主と顔を見合わせて苦笑する。
なので、今の今まで絵梨子にお水を出すことすら忘れていた。
そっとコップを置くと、絵梨子がやっと落ち着いたように長いため息をついた。

「ねぇ・・・美樹さん」
「何・・・?」

すると、絵梨子はふぅと息をはいて美樹と海坊主を見る。

「美樹さんもマスターも・・・どうしてモデルにならなかったの?」
「「・・・・・・」」
「2人は絶対にモデル向きよ。美樹さんは美人でプロポーション最高だし、マスターだって素敵な肉体美だし、この私が言うんだから間違いないわよ」

美樹と海坊主はどう答えていいか分からず頬を引きつらせる。
絵梨子の強引さは香からも話を聞いているし、実際に絵梨子と初めて会った時にすでにそれを経験しているので、何も言えないで、ははは、と空笑いをするしかない。

「あの、ね?絵梨子さん。きっと、私達よりもモデルになれそうな人が他にいるんじゃない・・・かしら?」

美樹が慎重に言葉を選んで言うと、絵梨子はハッとして笑顔になってまた捲し立てた。

「そうっ!そうなの!もちろん、マスター達にもモデルをしてほしいのよ?でもね、いたのよ、他にも。モデルになってほしい人達が!」
「そう・・・、そうでしょ?!いるのよ、ちゃんと。モデルになる人が」

美樹はやっと自分達から矛先がそれたことでホッとしてやっと顔に笑みを浮かべる。

「それで?どんな人なの?」
「うん、それがね・・・」

まさに絵梨子がうっとり顔で話そうとしたその時、カランとドアが開き「こんにちはー」と女性の声がした。
絵梨子はすぐさま振り返ってぱぁっと笑顔になる。

「香!」
「絵梨子?!」

親友との久々の再会に2人は驚いたけれど、香はクスッと笑うと絵梨子の隣のスツールに座る。

「こんにちは、香さん」
「こんにちは、美樹さん」

香の場合、オーダーしなくてもほぼ毎日顔を出しているので、すでに頼むものは分かっている。
海坊主がカップにコーヒーを淹れると香の前に出した。

「ありがとう、海坊主さん」

香は一口飲むと、ソーサーに戻して絵梨子をチラと見る。

「絵梨子は?仕事でこっちに来てるの?」
「そうなのよ、香。あぁもう、聞いてよ。私が新宿に来たのはねー・・・」

とさっき、美樹達に話したことを繰り返す。
香も絵梨子の迫力に苦笑するしかない。

「そ、そうだったの。それは・・・大変だったわね」
「そうでしょー?でもね?」

そう言って絵梨子はクスッと笑う。

「見つけたのよ、モデルを」
「あ、それ。さっきは話の途中だったでしょ?ね、どんな人なの?」

美樹が再び絵梨子に尋ねる。

「あ、そうそう。それがね、男の人は、外国の人で・・・見た感じアメリカ人かしら?とにかく、上背があって立ち姿もイイし、男の色気もあって、服も着こなしてて、顔もカッコいいの。おまけに女性の扱いに長けてるし。それに、女性は、髪がロングの美人でプロポーション良いし、何よりその男性といる時の表情が素敵で、2人がお似合いだったの」
「へー、そんなに素敵な人達が新宿にもいるんだ」
「うん、声かけようとしたんだけど、私としたことがタイミングが合わなくて」

香が感心したように言うと、絵梨子は残念、という表情でフと笑う。
そこで、ふと美樹が、ん?という顔になる。
ほかにも絵梨子から聞き出した情報を合わせてみると―――

「ねぇ、香さん。その人達って・・・」
「え・・・?」

美樹が身を乗り出して、香の耳元に顔を近づけてそっと囁く。

「もしかして、ミックとかずえさんなんじゃ・・・」
「・・・・・・あ」

美樹は海坊主と目を合わせると、海坊主も頷いた。
香も絵梨子の云った言葉を考えると納得、といった感じでコクコク頷く。

「そう・・・ね。うん、そうかもしれないわ」

そう言うと香はクスッと笑う。

「なぁに?香」
「ううん、なんでもない。その人達、いつか見つけられるといいわね」
「ええ、もちろん見つけるわよ。それに、なんだか香の近くにいると見つけられるような気がするのよねー」

すると、香の身体がピクと反応する。

「なんでよ?」
「だって、今まで私がモデルになってほしいって思った人は、いつも香の知り合いなんだもの。これは、私のデザイナーとしての勘ね」

あはははー、と香は空笑いをする。
絵梨子、やっぱり侮りがたし。
今、自分が思ったことを絵梨子も思っていたとは。
もちろん、香自身のことは棚に上げて、だが。

それに、絵梨子のことだ。
絶対に見つけそうな気すらしてくる。

「で、この後はまた仕事なの?」

香がこの話題から逸らそうと、絵梨子に話を振ると、絵梨子は満面の笑顔になる。

「うん、今日はもうおしまい。あの女のことを考えただけでイライラしてくるしね。でね、香。これからヒマでしょ?」
「・・・・・・あたしがヒマなことは確定なのね」

香が呆れると、絵梨子はきょとんとする。

「え、だってそうでしょ?」
「まぁ、そうだけどさ・・・」

そうはっきりと云われると、ちょっとグサッとくる。
そんな香は放っておいて、絵梨子はさっさと話を進める。

「じゃ、これから私の事務所にちょっと来てよ。香に着てほしい服があるんだ」
「あたし、モデルはやらないわよ」
「違うわ。そうじゃなくて、試作で作ったものがあってね。香が着たら似合うんじゃないかなぁ?っていう服があるのよ。どっちにしても、近々、貴女に連絡を取ろうと思ってたとこだったからちょうど良かった。じゃ、これから行きましょ。あ、でも、その前に、これ食べさせてね」

そして、絵梨子の目の前にちょうど置かれたパスタを食べ始める。

「ちょ、ちょっと待ってよ絵梨子、あたし、これから買い物行かないといけないし・・・」

慌てる香に、絵梨子はクスリと笑う。

「大丈夫よ、ちょっと着てもらうだけだから」

えー、もうホントに絵梨子は突然言うんだからー、と香はブツブツ言い、絵梨子は香の服のことを考えクスッと笑い、マスター夫婦はそんな2人を見て顔を見合わせてちょっとホッとする。

「じゃ、ごちそうさまでした」

絵梨子が食べ終わって、それぞれが自分の会計をすました後、共に外に出た。

「ね、絵梨子。あたし、確かにヒマだけど、でも、絵梨子の仕事はいいの?」
「いいの、いいの。いい気分転換にもなるし」

香は絵梨子を心配すると、絵梨子はにっこり笑って香の腕に自分の腕を絡めると、絵梨子はぐいと引っ張って自分の仕事場まで香を連れて行った。
何回か来たそこのある場所に通された。
中に入ると、ある服が飾ってあった。

「素敵・・・」

香が思わずそう言うと、絵梨子は笑顔になる。

「ちょっと着てみたいと思わない?」
「え、絵梨子?」
「これなの、私がさっき言ってた香に着てみてほしい服っていうのが」
「ええ?!これなの?あたし、こんなの着れないわ」
「ま、いいから、いいから」

そして、いつの間に呼んだのか、絵梨子のアシスタントを何人か呼んでスタンバイはすでに完了みたいだ。
それを見てとると、香は諦めたように微笑う。

「・・・分かったわよ。ありがとう、着させてもらうわね」
「ありがとう、香。おまけにその服、香にあげるから」
「ええっ?!ちょっと絵梨子?!」

香が焦っていると、絵梨子はくるっとドアに向かうとアシスタント達に何言か伝えると、楽しそうに出て行った。

「あ・・・」

香がそう呟いた時はすでに絵梨子は出て行った後。
アシスタント達がにっこり笑って、さぁ、観念しなさい、というように近づいてきて、香は、はぁ、とため息をつくと「よろしくお願いします」と頭を下げた。

絵梨子は楽しそうに自分のデザインルームの机に戻ると、携帯を取り出し電話をかけた―――。





********





昼食を食べ終えて、香がいつも通りキャッツへと出かけた後、しばらく新聞とテレビを見ていた撩は、「よし」と時計を見ると立ち上がる。

「そろそろナンパに行くか」

部屋を出ようとした時に家の電話が着信を告げた。
家の電話に着信なんて珍しいな、と思いながらそれに出る。
だが、出た直後、撩は激しく後悔した。

「もしもし」
『あ、もしもし、冴羽さん?あーよかった、家にいてくれたんだ。ね、今、ヒマでしょ?ヒマよね?これから・・・』


・・・・・・プチ。


電話を切った。

・・・なんだ、今のは?

なんて考えるまでもない。
相手は今ので誰か判ったけれど、話す気になれない、というか話したくない。
香に用事ならまた電話かけてくるだろ?と思い、そのまま今度こそ出かけようとしたら・・・。

プルルルル

「うおっ」

撩の携帯電話がポケットの中でブルブル震えている。
そして、イヤな予感は100%だ。

着信相手を見ると・・・やっぱり同じ相手。

・・・用事は香じゃなくて、おれ?

撩は、ん?と思いながら電話に出る。
すると・・・

『おっそーーいっっ!!!早く電話に出てよね』

初っ端からこれかよ・・・と思わず、はぁぁ、と深いため息が出る。

「・・・・・・」
『もしもし?冴羽さん?!もうなんで今電話切っちゃうのよ。あのね・・・』

チッ。
思わず舌打ちが出た。

相手が名乗らなくても判る。
香大好きデザイナーの絵梨子だ。

撩は、話す隙すら与えずに話し続ける絵梨子に、思わず受話器を遠ざける。

『ちょっと、冴羽さん?聞いてるのー?もしもーし』
「・・・聞いてる」
『だったら返事してよ。でね、ちょっとあるところに来てほしいんだけど』
「え、何で?」
『何、そのイヤそうな声は』

・・・思いっきり声に出ていたらしいことを知って、撩は思わず苦笑する。

「これから出かけるんだよ」
『ならちょうどいいじゃない』
「おれは、絵梨子さんとは違うところに行くからダメ・・・」
『どうせナンパでしょ?』

撩の言葉を遮って絵梨子にバッサリ斬られる。
撩は畳まれるように云われてグッとなり、返す言葉もない。

『はい、決まり~』

高らかに勝ち誇った声で言う絵梨子に、撩はただがっくりと項垂れるしかなかった。
絵梨子の楽しそうな声はさらに続く。

『あ、今、ふて腐れてるでしょ。でも、これに香が関わってくるっていったら?』
「香が?」

撩が眉間に眉を寄せて、はぁ、とため息をついた。

・・・また、絵梨子さんに捕まったのか。
いや、でも、あの絵梨子さんに逆らえるヤツはそうそういないだろうなぁ。

撩はまた1つ溜息をつく。

「で?香がなんだって?」
『だから、今から云うところに来て』
「は?!なんだそれ」
『いいから。そこで香が待ってるから』
「おい、待ってるって・・・」

撩には訳が分からない。
だが、絵梨子は構わず続ける。

『早く来ないと香が大変なことになるわよ~』
「なっ・・・」
『香、今、すごーくキレイになってあるところで冴羽さんを待ってるんだけど・・・・・・あ』

そこで、絵梨子の言葉が止まる。
撩としては、その先がすごく気になるんだけど、もやもやしているイヤな予感は100%から120%・・・いや、150%に格上げされている。
撩はまだ通話状態になっている携帯を耳にあてながら、すでにドアを開けて外に飛び出していた。
すると、揶揄するような絵梨子の楽しそうな声が聞こえてきた。

『早く来ないと、もうすでに大変なことになってるわよ』
「もしもし?!絵梨子さん?!おいっ」

その後、撩が絵梨子に呼びかけると、なんだかガヤガヤといろんな声と雑音が聞こえてくる。
中には男の声も混ざっているようで。

『あ・・・ちょ・・・』

途切れ途切れ聞こえる絵梨子の声。

「くそっ」

撩は通話を切って絵梨子から指定された場所へ急いだ。





「ちょっと絵梨子。この服を着られたのは嬉しいんだけど、なんでそのまま外に出てここにいるのかしら?」
「ま、いいじゃない。それより、どう?私の最新作」
「・・・うん、素敵。さすが絵梨子ね」
「でしょー?さすが私。それに、やっぱり香によく似合ってるわ」
「そう?えへへ、ありがとう。でも、やっぱりって何?」
「え?あ、それはいいの。こっちのことだから」

そう言って絵梨子は、うふふ、と笑う。

絵梨子が撩に電話する十数分前、香は絵梨子と一緒にある場所に立っていた。
そこは、デパートの正面玄関の前。
待ち合わせに割と使われていて、まさに今朝、絵梨子自身が目撃した、モデルになってほしい2人が待ち合わせをしていた場所だった。

香は絵梨子に云われた服を着ているのだが・・・。
試作品、と呼んだそれは、実は、絵梨子が仕事の合間に気分転換に作った香にあげるために作った服で、香のことをよく解っている絵梨子ならではの服、ともいえる。
その服は、見事に香に似合い、男女問わず視線を惹きつけるほど香の魅力を最大限に引き出していた。

そこに立つと、絵梨子は、うん、と1つ頷くと、ちょっと待ってて、と香に云うと、少し離れて電話をし始める。
相手は、先ほど電話した、撩だ。
その撩に、今からここに来い、と伝えた。

撩の返事は聞いてはいないけど、必ず来る。
何せ香が関わっているのだ。
来ないはずがない。

絵梨子はクスクスと笑いを堪えることができずに吹き出しながら話していると、早速、1人で立っている香は2人組の男にナンパされている。

「あ・・・ちょっと・・・香!」

絵梨子は慌てて香の元に駆け寄る。
すると、香は困ったように丁重にお断りしている。
えー、いいじゃん、とかなんとか言っているアホそうな男達を絵梨子は一瞥すると、イライラとするのを抑えられなくて、つい口を出し始めてしまった。

「ちょっとあなた達、何よ、その色のその服は。これはないわ、ないわよね?だいたい、全く似合ってないし。この娘をナンパしたいなら・・・」
「ちょ、ちょっと絵梨子!」

いきなりキッとナンパ男達を一睨みして始まった絵梨子の小言に、男達は「なんだよ、この女」とかなんとか捨て台詞を吐きながら去って行く。

「まったくイヤねー。あの服装でナンパしようとか、おかしいと思わない?」

絵梨子はイライラしながら腕を組んでいる。

「ちょっと絵梨子ぉ?絵梨子のセンスに適う人なんてそうそういないわよ」
「いるわよ。現にいたんだから。私、今日、朝見たんだから」
「・・・はいはい、分かったわ。でも、ありがとう。おかげで助かったわ」
「え?なんで香がお礼なんて言うの?私はただあの人達の服のセンスが許せなかっただけよ?」

そう言って絵梨子がきょとんとしたのを見て、香は笑った。
でも・・・と香は思う。

・・・もし絵梨子が見たのがミックだったら、確かにビシッと決めてそうよねー。だって、かずえさんと逢うのは久々のはずだし。

やけにキメているミックを想像して、あーうん、ありえる、と頷く。

香が着ている服は、絵梨子の最新作の試作品・・・とはいえ、あのエリ・キタハラがデザインした服だ。
おまけに、香にサイズも色もピッタリ合っていて、香の魅力を上手に引き出している。
まるで、香のために作ったかのように・・・・・・。

絵梨子は、そんな香を見て満足そうに頷き、楽しそうに笑う。

「あー、早く来ないかしらねー」

すると、香が首を傾げる。

「誰か来るの?それに、なんであたし達、こんなところにいるの?そもそも、あたしは絵梨子がこの服を着てほしいっていうから事務所に行ったのよね。それが、着たあとになんで外に出て、ここにいるのかしら?」
「あ、それはねー」

絵梨子が理由を話すと、香は「ええっ?!」と驚く。

「撩に連絡したの?!」
「うん、連絡したわよ。始めは渋ってたけど、香が関わると豹変するわよねー。ホント、面白いわー、冴羽さんって」
「ってか、撩のこと、からかってるの?」
「ううん、からかってないわ。ただ、私は、冴羽さんに、こんなにキレイで素敵な香を見てほしいだけよ」

絵梨子は当然、というように言ってのける。

「・・・なら、始めからこんな目立つ場所じゃなくて、どこかの喫茶店とかで待ち合わせすればいいじゃない」
「あら、それじゃ面白くないじゃないの。それに、冴羽さん以外の人にもたくさん見てほしいし。だって、私が作ったモノよ?おまけに香はモデルはやらない、なんて云うじゃない?だったら、普段でって思うけど、あなた達の仕事じゃ、頻繁に着る機会もないしね。だから、こういう人通りの多い目立つ場所で着て、色んな人にチラッと見せて、いつもより女度が上がってる香を見てドキッとしてもらったらいいと思うんだけど、どう?」
「なっ・・・何よ、その理屈は」

それに、やっぱり面白がってるんじゃない、と香は思ったが、それは黙っておく。

「あっ、ほら、見て」

絵梨子がホント楽しそうに笑いながら周りを見渡すと、チラチラと男性の視線が香に向いてきている。
それを意識してしまうと、途端に香の頬は朱に染まる。
それを見た絵梨子はクスッと笑う。

「ホント、香はキレイなだけじゃなくて可愛いわねー」
「ちょっ、絵梨子ぉ?!」

そんなことを言っていると、スッと近づいてくる1人の男。
それなりに洋服を着こなし、顔もまあまあ・・・の男が香に近づき、にこっと爽やかな笑みを見せる。

「キレイですね」
「・・・はっ?」

突然いきなり何を言ってくるの?この人は。

香は怪訝そうな顔でその男を思わず見つめてしまう。
すると、男の方も見つめられることで気を良くしたのか、内心で焦っている香を知ってか知らずか色々と話しかけてくる。

・・・ええっ?!ちょっと、どうしよう。

それについていけなくて、絵梨子に助けを求めるが、絵梨子は笑ったまま。
1人が動き出すと他の男も動き、いつの間にか、別の男もだんだん寄ってきて、ちょっとした人だかりができて、以前のようなナンパ合戦が香達の目の前で繰り広げられ始める。

「なっ・・・」

抜け出すに抜け出せなくなってしまった香と絵梨子。
香はどうしよう、と焦るが、絵梨子は・・・。

・・・あら、ちょっと困ったことになってきたわね。
ちょっと人数が多いけど、さすが香。
やっぱり私の服を着た香はコワいものなしね。
香の魅力に惹きつけられるのね、きっと。
でも、それにしても、あの男は何してんのよ、今来ないと意味ないでしょうが。

とイラッとし出す。

絵梨子は香と顔を見合わせると、少し頬を引きつらせた。





はぁはぁ。

絵梨子の待ち合わせ場所の近くまで全力疾走してきた撩は、さすがに息が上がって少し立ち止まって息を整える。
徐々に落ち着いてきて、はぁ、と大きく息をはいた。
すると、男共が群がっている場所が1つあって、撩は眉を思いっきり顰める。

「なんなんだ?あの人だかりは―――」

そう言いながらも嫌な予感が、撩の頬を引きつらせる。
その時、撩とすれ違う2人の男の会話が聞こえる。

「あのお姉さん、キレイだったな」
「おぉ、モロおれのタイプ」

なんて言っているのを聞いて、もちろん黙っちゃいない。
すれ違いざま、そいつらの首根っこを掴む。

「おい」

撩が声をかけると、男達はビックリしながら振り返る。

「・・・はい?」

1人の男が答える。

「今、話してた『キレイなお姉さん』の話だけど、それってあの人だかりの中に・・・」
「あっ・・・は、はい。そうです」

男達より断然デカい撩に首根っこをいきなり掴まれて、完全に怯えている男達は、コクコクと頷く。
そんなのお構いなしに撩はさらに問いただす。

「その女ってどんな女だった?」
「え、あ、あの・・・ショートカットのキレイな女性(ひと)・・・でした」
「1人だったか?」
「いえ、2人です」
「2人・・・ねぇ」
「あ、あの・・・?」

訳が分からないなりに撩の質問に答えた男達に、撩はパッと手を放す。
いきなり放されたので、男達は前につんのめる。
撩は、はぁぁ、と盛大なため息なのかなんなのか、長く息をはくと、男達にはすでに目もくれずに歩き出す。

ショートカットのキレイな女性。

それと絵梨子が言っていた待ち合わせ場所、そこにいたのが2人だったことを合わせると、間違いなく香だと確信する。
今度は一体、絵梨子にどんなカッコをさせられてるのか。
ショートカットということは、少なくともカツラはしてないようだ。
撩は落ち着いて歩いているように見えるけれど、その実、歩く歩幅はいつもより大股で、瞬きをする度に眼を鋭くしながらぐんぐん風を切って男の群れに近づいていく。

近づいていくと、何やらワーワー言っている声が聞こえてくる。

「おれと一緒にお茶でも・・・」
「いや、おれと一緒にデートしよう」
「いやいや、おれと・・・」

おれと、おれと・・・と誰もが自分と一緒に、と香を誘っているようだ。
それを聞くたびに、怒りが募る。

・・・言っとくけど、コイツはおれの女だぞ?
デートもさせなきゃ、触らせもしねぇよ。

撩は傍にいた男をぐいと押し退けると、次々に押し退けていく。
押し退けられた男は、隣の男にぶつかって・・・とそれが数珠つなぎにつながって、端にいた男はつんのめっている。
そして、ようやく一番前の男を押し退けると、困ったような顔をしている香に行き合った。

香は撩を見て一瞬驚きの表情を見せて、でも、すぐにそれが嬉しいそれへと変わる。

「撩っ!」

撩は一瞬で香の全体を見て、内心でため息をついたのは言うまでもない。
そして、絵梨子を横目で見る。

・・・相変わらず香のことをよく解ってることで。
おかげで、香はモデルばりに目立って、おまけに似合ってるもんだから男共の視線が向くこと請け合い。
絵梨子さん、君は毎回、毎回、見事におれ達のことを振り回してくれるよなー。

撩は一歩香の前に進み出ると、手を腰にあてる。

「で?おまぁはここで何やってんだ?」
「それは絵梨子に訊いてよ。あたしはただ、絵梨子にここでちょっと待っててって言われただけだもの」
「え~り~こ~さ~ん」

撩が絵梨子を半眼で見ると、絵梨子はわくわくした表情で2人を見ている。

「あら、私はただ香に試作品を着てほしかっただけよ。そしたら、さすが香。見事バッチリ似合うじゃない。だったら、外に出て、みんなに見せたくなるってもんでしょ?デザイナーとしては」
「・・・なんなんだ?その訳の分からん説明は」
「ま、いいじゃない。私が作った香の服は、とっても良く似合ってるってことが分かったし」
「でも、あたしモデルはやらないからね」

すると、周りがザワザワし始める。
何事かと3人が見回すと、男共の1人が香を指さして

「この人、モデルだってよ!」

と高らかに叫ぶと、一斉に「おおぉぉぉぉっ!!!」という雄叫びが3人を包む。
その、異様な雰囲気に香は2人を、撩は香を、絵梨子も香を見て、頬を引きつらせた。
そしたら、また・・・

「ぜひ、おれとデートをっっ」
「いや、おれと一緒にっっ」
「何言ってるんだよ、おれとっっっ」

次々に、香へ誘いをかけながら手を伸ばしてくる。

「りょ、撩っ」

香は撩に手を伸ばすと、撩が素早くそれを掴み、ぐいっと引き寄せる。
すると、周りがやいやい言い出し始める。

「何だよ、お前は。後から来といて、邪魔すんなよな」
「そうだ、そうだ」

男共は撩に向かってなんだかんだと文句を言っている。
そして、ついに、ある1人のガタイのいい男が撩の肩に手をかけた。

「おいっ、その娘から離れろっ」

次の瞬間、撩の鋭く冷たい視線がその男を捉える。

「あぁ?!」

腹の底から出たような低い声がその男に向けられ、男が一瞬、怯む。
だが、果敢にも男は撩に立ち向かっていった。

「その娘から・・・離れろ」

勢いがなくなったその声に追随して加勢していく他の男達。

「そうだそうだ、その人から離れろ」
「おれ達のその人から離れろ」


・・・ブチッ


撩の中で何かが切れた。

香を引き寄せて、抱きしめている手に力を込める。
香がもっと撩と密着する。

「・・・撩?」

香が小さく撩に問うて撩を見ると、撩は勝ち誇った表情で笑みすら浮かべている。
それを見た香は、ピキッと固まって、思わず逃げたくなった。
何故なら、撩の眼が・・・笑ってなかったから。
香が固まったまま撩を見ていると、撩は俯いてクッとそれはもう意地の悪い笑みを刻む。
そして、そのまま顔を上げて周りを見回す。

「悪ぃけど、コイツはおれのだから」
「・・・っ!」

香は驚いたように眼を大きく見開いてから一気に顔が真っ赤になって、撩の胸に顔を埋めた。

『『『・・・・・・っっっ!!!』』』

そこにいた男達の声なき声が漏れて、眼が一斉に見開かれて、唾をゴクリと飲み込む音がした。
一瞬の静寂。
そして。

「なっ、なっ、なっ・・・っ」

言葉にならない声を出して、撩と香の2人を指さす。

「えっ、えっ、えっ・・・???」

理解できない、といったように同じ言葉を繰り返す。

撩はニヤリと笑うと、グッと香を強く抱きしめる。

『『『なっ・・・!!!』』』

あわあわ、と指さした手を震わせながら2人を凝視している男達に、撩はさらに言う。

「もしかして、信じてないだろ」

そう言うと、相手の返事も聞かずに、撩は香の頤に手をかけて上を向かせる。

「えっ?」

香がそう呟くと、撩はその手を滑らせて頬を包む。
この態勢は・・・もしや。
そう思いながらも香が動けずにいると、香の考え通りに撩が香に顔を近づける。

・・・ええっ?!

そう思った時にはすでに撩に唇を塞がれていた。
その瞬間、2人を取り巻く周辺で衝撃が走った。

『『『!!!!!』』』

静寂が一帯を包む。
そこにいる誰もが眼をコワいくらい大きく見開き、口をパカッと開け、固まったように動かなくなる。
さすがの絵梨子も、驚いたまま動けないでいた。

そんな周りは置いといて、撩は香のそれの感触を楽しむ。
香が、いつもと違う服を着ているからか、いつもと違う環境にいるからか、いつもよりもさらにキレイになっているからか、それとも全てなのかは分からないけれど、撩はいつも以上に自分の中の色々な部分が高まっているのを察した。
誰かに見られているから、といって、今、この行為をやめようとは全く思わなかった。

むしろ、見せたい、見せつけたい。
そう思った。

・・・誰が『おれ達のその人』だ。
コイツは!!
コイツは、おれの女で、誰にも触れさせやしない。

撩は自分がキレた原因となった、誰か、のセリフを思い出し、胸糞悪くなる。
そして、そいつらに見せつけるために、撩は香に深く、強く、触れた。

そして、香は、最初は驚いて、それから羞恥で頭がパニックになったけれど、撩に強く抱きしめられているせいもあるけど、全く動けない。
それでも、撩とのキスは、いつも甘くて、そこに無性に『男』を感じて、香は壊れそうなくらい心臓がドキドキして、されるがままに撩の服をギュッと掴んで、力が抜けていくのをなんとか耐えようとしているのだ。
そして、結局、最後は瞳を閉じて撩のキスを受け入れてしまうのだ。

今もそう。
香は、知らない男達に囲まれてほんの少し感じていた恐怖もなくなって、撩の匂いに包まれた安心感から、いつの間にか、撩に身を委ねていた。

どのくらいキスしていたのだろうか。
ほんの数秒だったか、それとももっと長かったのか。

撩がやっと香から離れると、香もゆっくり瞳を開いて、2人の視線を絡ませる。
香は、恥ずかしさもあって頬を朱に染めてはにかみ、撩は、香がはにかむのを見てフッと頬を緩めた。

それから、撩が、今思い出した、とでもいうように、チラリと視線を周りに一瞥すると、男達は立ったまま魂が抜けたように間抜けな顔をして腑抜けていた。
それを見て、撩は溜飲を下げた。
自慢げな顔をすると、フフンと笑ってみせる。

「どうだ?これで分かったか?コイツが誰のものか」
「ぐっ・・・」

男達は悔しそうな顔をして、すごすごと引き下がって行った。
それを視線を向けることで見送ってから口を開いたのは絵梨子だった。

「・・・はぁー。それにしても、やってくれるじゃない、冴羽さん。まさか、ここまでしてくれるとはさすがの私も予想外だったわ」

と言った後、ハッとして悔しそうに地団駄を踏む。

「あーっ、しまったーっ!!こんなことならデジカメもってきておくんだったーっ!!!最高の画が撮れたのにーっ!!悔しいっ」

絵梨子が本当に悔しそうに残念がっているのを見て、撩も香も頬を引きつらせるしかない。

「え、絵梨子・・・さん?それ、マジ?」
「大マジよ!・・・あ、スマホって手もあった!あ゛ーっ、つい見入っちゃってすっかり忘れてたーっ!もう、冴羽さんのばかっ」
「え?なんでおれ?」
「そんなの当たり前じゃない。キスするつもりなら、する前に『する』って言ってよ」
「・・・・・・」

いつにも増して無茶苦茶だ。
・・・どこの誰が、なぜ、キスをする前に今からキスをする相手ではない人間にわざわざ『宣言』しなければならないのか。
相変わらず絵梨子さんって・・・。

撩はもう何も話す気すら失せていた。
そして、撩の中で、絵梨子はやっぱり『もう金輪際関わりたくない』人物のトップクラスにいるのだった。

それから、惚けていた絵梨子が正気に戻って、からかい、というか、質問の嵐をしてきたのはやっぱり撩に対してで。
撩はそれをなんとかかわしながら、早くここから抜け出す術を探っていた。
そんな2人の攻防が繰り広げられている最中、香はといえば、あまりの恥ずかしさから、ハンマーをすることすら忘れて、どうすることもできずに撩の後ろに回って、撩の背中に額をつけて、服をギュッと握っていた。

それから、香が会った時と比べると、すっかりいつも通りのパワフルで元気になった絵梨子がいて。

「今日はなんて最高な1日なのかしら。素敵なモデルを2組も見ることができて、創作意欲がわいてきたわーっ。よぉし、やるわよ!」

そして、もうすっかり頭はデザインのことでいっぱいなのか、何やらブツブツ言って、歩を進めている。
2人が唖然として見守る中、くるりと振り向くと、スッキリした、でも何か企んでる笑顔を見せた。

「新作ができたら、ぜひ2人に着てもらうから、それまで楽しみに待っててね・・・あ、香。今着てるその服、あげるわ。香にちょうどピッタリだし、冴羽さんと出かける時にでも着てね」
「ちょ・・・絵梨子っ」

クスッと笑って言うだけ言うと、絵梨子はまたクルリと向きを変えると、色々思い浮かべながらだろうか、ふんふん言いながら2人がいる場所から去って行った。

「・・・・・・なんだったんだ?一体」
「・・・さあ」

茫然としたまま、気が抜けたような声を出すが、香の一言に違和感を覚える。

「・・・さあ、ってことはないよな?お前、絵梨子さんと一緒にいたんだろ?」
「あたしだって知らないわよ。大体、絵梨子にこの服が試作品であるから着てみてって云われて着ただけよ。それがいつの間にかこんなとこに連れ出されて、知らない男の人達に囲まれて・・・ちょっと怖かったりして訳分からないんだから」

香がムキになって言うことに、撩は、やっぱり絵梨子さんに振り回されたな、おれ達、と苦笑する。

「ま、いいよ。これで、邪魔な奴らはいなくなったし」
「うん・・・」

香は恥ずかしそうにもじもじと自分の服をいじっている。

「ん?どうした?」

撩が香を覗き込むと、香がチラチラと撩を窺いながら上目遣い、しかも目力抜群の潤んだ瞳でおずおずと訊いてくる。

「あのね・・・」
「あぁ」
「どう・・・かな、これ・・・」

云われた内容を理解して、どう答えたものか、と一瞬考える。
素直に褒めてみるか・・・?
でも、どうにも照れくさい。
キスしといて、照れくさいも何も今更、という感もなくはないが。

「・・・さすが絵梨子さんだな。これ、おまぁのために作ったもんなんだろ?」
「え、違うよ?新作の試作品だって言ってたし」

香がきょとんとして答える。
すると、撩も、え?となる。

「でも、おまぁにピッタリって・・・」
「・・・そういえば、言ってた・・・かな?」
「「・・・・・・」」

2人の表情が一瞬固まる。

「・・・・・・試作品でおまぁにこれほどピッタリの服・・・を作るわけ・・・ないよなぁ、さすがに」
「・・・うん、そ、そうよ。たまたま、モデルの人があたしと同じような感じなのよ」

2人して空笑いをする。
一瞬、何ともいえない微妙な空気が流れる。
撩が焦って香に忠告する。

「おい、香。おまぁ、これからしばらくは絵梨子さんから連絡が会っても絶対に会うなよ。モデルにさせられるぞ」
「・・・まさかー、と云えないところが絵梨子のスゴイところね。・・・分かった。しばらくは会わないようにするね」

香も苦笑しながら答える。
意見がまとまったところで2人してホッと安堵の息をつく。
そして、撩が改めて香を呆れた表情で見やる。

「ホント、おまぁは・・・」
「・・・何よ」
「・・・何でもない」

きっと、香のこの性格はもう直らない。
誰からも好かれる所以、だろうか。
頼まれごとをされるとイヤと云えない、その性格は、絵梨子に関していえば、吉とでるか凶とでるか。

さっきみたいなことが起こるのはもうたくさんだ。
もともとモデル並みのスタイルを持つ香がさらにキレイなカッコをして、見知らぬ男共のイヤらしい視線に晒され、ナンパされて困っている香を見るのは―――。

撩は、内心で盛大にため息をつくと、頭をグワッと掻く。

「ちょ、どうしたの?撩」

突然の撩の行動にぎょっとした香が撩を窺う。
ボサボサになったまま、撩はふぅと肩を竦める。

「・・・何でもない」

香は何か言いたげだったけれど、そのかわりに「頭屈めて?」と撩を屈ませて、その髪を直す。
香の指が優しくて、擽ったくて、しばらくそのまま触らせていたけれど、その手をとって、そのまま手をつなぐ。

「撩?」

香が小首を傾げると、撩はフッと笑う。

「せっかく絵梨子さんが作った服着てるんだし、目の前はデパートだし、ちょっと見ていくか?」
「うんっ、行く」

香は嬉しくて、迷わずに撩に握られた手に力を込めて握り返す。
撩は、香にそうされたことで急に気恥ずかしくなってきて、思わず手を離す。

「あ・・・」

香が残念そうな声を出したことに妙な擽ったさを覚えながら、撩は腕を出す。
あ、と香もそれに気づいて、ふふ、とやっぱり嬉しそうに微笑うと撩のそれに自分の腕を絡める。
香が撩にくっついて、ムニ、と柔らかいモノが腕に当たって舞い上がるほど純情ではないけれど、今日は、なんだか香のそんな仕草が嬉しい、と感じていた。

「・・・行くか?」
「うんっ」

思わず撩の声が上ずったように聞こえたのは気のせいか、否か。

・・・これじゃ、おれが香とのデートを楽しみにしてたみたいだな。

撩は内心で苦笑しながらも、チラリと隣にいる香の嬉しそうな表情を見ていると、ま、いいか、と思ってしまう。
進む先は、デパート。
歩きながら、撩は今気付いた、というように香が持っているお洒落な紙袋をふと見る。

「なんだ?それ」

撩が香に訊くと、香は、あぁ、とうっすらと頬を染めた。

「これは、あたしがさっきまで着てた洋服。絵梨子の事務所で脱いじゃったから、これに入れてもらったの」

そう言うと、撩は、なるほど、と思い、スッとそれを自分で持った。

「撩?」
「いいよ、これは。おれが持つ。どうせ、これから買い物するんだろ?」
「・・・・・・ふふ、ありがと、撩」
「どういたしまして」

視線が合うと、香は、ふふ、と笑い、撩は、クッと口角を上げて笑う。
その撩の視線が一瞬、甘く煌めいて、香は小首を傾げた。
すると、撩がだんだん香に近づいてきて・・・


―――チュッ


そうリップ音をさせて、撩が触れるだけのキスをした。
香は眼を閉じる間もなく、パチパチと瞬きをする。
もう、撩はしてやったり、とニヤリと笑いながら前を向いて何事もなかったかのように歩いている。
まるで、風のいたずらのように、本当に一瞬だった。

「撩?」

香はそれを確かめたくて、撩に問う。
撩は、香の反応に楽しそうにククッと笑っている。

「もうっ、撩?!」

香はからかわれた、と思い、プッと頬を膨らませると、プイとそっぽを向く。
撩はまだ笑ったまま、香の耳元へ近づいて、甘く囁く。

「・・・本気だぞ」
「・・・・・・え?」

香がバッと撩へ勢いよく振り返る。
すると、甘い煌めきを宿した瞳で優しく見つめられて、香の胸が甘く疼く。
瞳が逸らせない。

撩はそのまま、くいっと香の手を握り、デパートの入り口から逸れて人通りの少ない裏道へと入る。
そして、そのまま、香の背中をトンと壁に押し付けた。
香が撩を見ると、思いのほか真剣な・・・というか、ちょっと不機嫌なような顔をしていて。
香はやっぱり視線は撩から離れることはなかった。

その時、突然塞がれた唇。
撩に深く吸い付かれた、と認識したのは、重なってすぐだ。
え?え?と香は何が何だか訳が分からないまま、撩を振り切るなんてできるはずもなく、それを受け入れる。

何度も重なる・・・角度を変えて。
撩は香とキスをしているうちに、自分の中から出る激しい感情を抑えることができずに、香のそれを貪った。

・・・そんなキレイなカッコをして・・・ただでさえ、鈍感で天然なのに。
男をあしらう術すら知らないくせに、知らない男達に囲まれて、あげくにナンパされて。
お前のせいじゃないにしても・・・ちょっと無防備すぎだ。

撩の中で募ったイラついた想いはまだ燻っていたようだ。

撩は、苦しくて少し開いたところに舌を差し入れて、香の口内を荒く愛撫する。
香の舌を捉えると、絡めて、吸って、息さえも奪うほどに貪る。

「・・・んんっ・・・」

香が苦しそうなくぐもった声を出し撩の服をギュッと掴んで、ようやく撩は唇を離し、至近距離から見つめた。
香がゆっくり瞳を開いて、大きな瞳に撩を映し出す。
撩は、香の瞳に映った自分を見てハッと気づき、はぁ、と息をつくと、香の肩に顔を埋める。
香は潤んだ瞳で撩の服をギュッと掴んでいる。

「香・・・」
「・・・なに?」

名を呼んだその声は、掠れていた。
小さくそう答えた香に、撩は腕を香の腰に回し、抱きしめた。

「・・・ばーか」
「なっ・・・ちょ、撩?!」
「・・・んなカッコしやがって・・・」
「撩・・・?」
「おれがどれだけ・・・っ」

・・・おれがどれだけ妬いたか、お前は知らないだろう?

そんなことはもちろん香には云わないで。
言葉を呑みこんで、撩はふぅ~、と長く息をはいた。
暴走しそうになった想いを吐き出すかのように。

そして、全部吐き切ると、息を吸って、香を見た。

「行こうぜ」
「え、ちょっと。撩?」

結局、撩に振り回されて訳が分かっていないだろう香の手を引っ張り、表通りに戻る。
撩は気持ちを切り替えることで、払拭していた。

そう。
夜、香に十分教えてやればいいのだ。
鈍感で天然の香に。
自分の容姿が、世の男共にどう見えているのか。

そう思うことで、撩はとりあえずスッキリさせた。
それに、今日は香にさんざん振り回された。
・・・とはいっても、元の原因は絵梨子ではあるけれど。

だから、この少しの時間くらい、自分が振り回したい。
香はきっと訳が解ってないんだから、それぐらい構うものか。

撩はそう思い、ククッと笑いながら香を連れてデパートへ入っていく。

「なぁ、まずはどこを見るんだ?」
「あ・・・うん。そうねー。じゃぁ・・・」

香は、おそるおそる撩を窺いながらもどこか嬉しそうに腕を組んで、エスカレーターへ向かった。






+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

<あとがき>
うわ、なんか撩ちゃんがスゴイ方向に話がいっちゃったなー(^^ゞ
・・・というわけで、「待ち合わせ」RKバージョンのお話でした~☆
いかがだったでしょうか?
撩ちゃんのイメージが違うっっっ!!!と云われる方もいらっしゃるかもしれないですが、これはあくまで実梨が描く話ですので、軽く流していただけたら有難いですv
所々、ミック×かずえ編とリンクさせていたのですが、いかがでしたでしょうか?
絵梨子さんがミック達編で出ていたのには、こういう理由があったんですねー(*^^)v
いやー、やっぱり絵梨子さんが出てくる話は好きだ~っっっvv
描いてて楽しい♪♪♪
香ちゃんを可愛くしてくれるしヽ(*>∇<)ノ
撩がちょっとは妬いてくれるし(≧▽≦)
いやいや、今回は結構妬きました!
妬きまくってくれました~♪
その結果、ちょっと暴走してくれたしvvv
こんなちょっとダーク?っぽい撩がいてもいいかな、なんて思ったりして♪
最後まで読んで下さった皆様、どうもありがとうございましたvvv

【 2013/10/04 (Fri) 】 NOVEL | TB(-) | CM(0)
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撩&香の一コマ♪
プロフィール

実梨

Author:実梨
シティーハンターが好きで、二次創作を始めました(^^ゞ
カッコいいリョウと可愛い香ちゃんを目指して、日常の色んな2人を描いていけたらいいな、と思ってますv
初心者なので、まだまだ未熟で駄文ばかりではありますが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです♪

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