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本当の私1

※これは『偶然の再会』という話の中で香ちゃんのとあるセリフ(「一度会ったあたしを忘れられなくて~」)から生まれた話で、『偶然の~』を読んで頂いてからの方が解りやすいかと思います。
なお、この話は捏造であり、原作で終わった時点(港で別れたあと)から話が始まり、香ちゃんは「お嬢様になりすました」ではなく「本当の元華族のお嬢様」という設定となっておりますので、設定の違いを不快に感じる方はどうぞ、ブラウザバックにてお戻り下さいませ。

というか・・・パラレル?!
2人の性格が全然違う?!
そして、ツッコミどころ満載~(^^ゞ

ですので、それでもいいよ~、という方はどうぞ、お読み下さいvvv
なお、苦情・クレーム等は受け付けませんので、宜しくお願いいたします。

























彼と別れて船に乗ってもまだドキドキしていた。

―――キス・・・されるかと思った。
目を閉じて、頤に手をかけてそっと顔を上げられて、微かにかかる彼の息。
彼の気配がすぐ近くにあると知り、でもイヤじゃなくて、嬉しさと戸惑いがない交ぜになってどうすればいいのか分からなくて、ただ身体が緊張して固まっていた。
男の人にそんなことされて、イヤじゃなかったのが初めてだったから。
でも結局、キスされそうで・・・霧笛という名の鐘の音が鳴り終わってしまったために、されないまま別れてしまった。

過ごした時間は夜のほんの数時間。
それでも、彼―――冴羽撩、と名乗った男と一緒に過ごした時間は今までのどんな時間よりも楽しさがギュッと詰まっていて、初めて男の人と過ごす楽しさを知ったような気がする。
今まで知り合った男性は、私というより、むしろ、いつも自分の後ろにある槇村家を見ている人達ばかりだったから、彼と過ごした時間が何よりも楽しくて、離れがたかった。

彼・・・撩は、様々な場所に連れて行ってくれたし、傍から見たら恋人同士にも見えたかしら?
たぶん・・・ううん、確実に女性の扱いに慣れていた。
私のような世間知らずの人間にも優しく接してくれたし、身体が大きい、というのはもちろんなんだけど、身体だけじゃなくて、懐が大きい、とでもいうのだろうか。
全身まですっぽりと包み込んでくれて、撩なら何をしても許されるのではないか、と思えるほどの強さと安心感、そして優しさがあった。
そのおかげか、私は初めて外で自由に羽を伸ばして『想い出』も作れた。

今もまだ―――
耳に、頭に撩の声が残ってる。
顔に、撩の息遣いと無骨な大きい手の感触が残ってる。
肩に、腕に、手に、腰に、身体のあちこちに、撩が優しく触れた感触が残ってる。
抱きしめられた時の厚い胸板、逞しい腕、大きい手。
そして、間近に感じた熱い彼の息遣い・・・
全てがまだ、鮮明に身体が覚えていて、忘れることなんてできない。

「撩・・・」

声に出して名前を呼んだら、別れたばかりなのに、会いたくなって、声が聞きたくなって、船での自分の部屋のベッドに顔を突っ伏した。
胸が切なく、甘く疼く。
キュン、と切ない痛みとともに締め付けられる。

この痛みの正体がはっきりと分からなくてスッキリしないまま、私はアメリカへ留学した。







アメリカで過ごす日々は、私にとって、とても刺激的で、今まで経験したことのないようなことが多くて、本当に楽しかった。
今まで伸ばしていた髪もイメージチェンジしてみたくなって、ショートに切った。
そこで知り合った友達とも親しくなって・・・何人かの男の人にも告白されたけど、いつもお断りしていた。
申し訳ない、と思いながらも、私の心には、あの時出会った撩がいて、忘れることができなかったから。
アメリカにいる今でも昨日のことのように思い出せる顔や声、1つ1つの仕草まであの時のことをちゃんと覚えてる。
次はもう会えることもない男性(ひと)だろうけど、きっと、私は彼のことを忘れることはないだろう。
そして、撩以上の男性に出会わない限り、恋愛もできないかもしれない。

あの時感じた"痛み"の正体は、『恋』だった。
アメリカに来て、彼への想いは募るばかりで、逢えない、となると余計に逢いたくなる、顔が見たくなる、声が聞きたくなる。
撩への想いは徐々に膨らんでいって、もう自分の気持ちを誤魔化せないくらいまでに大きくなった。
誰かに告白される度に撩のことを思い出していたから、きっと、想いが溢れ出てしまう。
そうならないうちに、帰りたい。

日本に・・・
撩のいる日本に―――帰りたい。

友達と過ごす日々はもちろん楽しかったけれど、それと同時に日本にも早く帰りたかった。
そんな相反する想いを抱えながら毎日を過ごして・・・

留学期間は1年。
撩と出会った、あの季節になって、私は帰ってきた。
アメリカに行って、日本にいた頃の大人しかった私とは違う、視野が広がった、あの頃より活発になった私になって―――。







日本に帰ってきた私は、やっぱり体質の変わっていない躾の厳しい家に連れ戻されて、あの頃と同じような日々が始まった。
でも、私だって、アメリカに行って変わった。
今まで、ほとんど学校の行き帰りくらいしか外出しなかったけれど、今の私は1人でも行動できるくらいアクティブになった。

撩への想いはあの時から全然変わっていない。
そればかりか、逢いたい気持ちは膨らむばかり。
彼には私の名前を告げなかったし、アメリカから帰ってきてることさえ知らないだろう。
だから、逢いに来て、とも言えない。
だったら、逢いに行けばいい。

・・・私から。

そのために、なんとか親を説得して、車の免許も取って、車も買った。
私の車だから、それで私がどこに行こうと、それは私の勝手だ。
そうは思うものの、いざ、行動に移そうと思っても、今まで躾が厳しかったこともあり、すでに身についてしまった習慣はなかなか直せそうにない。
だから、こっそり行くことにした。
家族が日中、留守にする日を選んで、私もこっそりと外に出た。
こんなことをするなんて、初めてだったから、すごく緊張して、でも、同時に逢えるかも、という期待にドキドキもした。

彼の情報は、冴羽撩、という名前と、新宿で会った、ということだけ。
だから、私は新宿に行くしかなかった。
それしか情報がなかったから。

まず、彼と出会ったバー『サンライズヒル』に行ってみたけど、来た時間が早くて、まだお店は開店していなかった。
キョロキョロと見回すものの、どこに何があるか分からない。
でも、じっとしているなんてできなかったから、分からないまま、人の波に沿って歩いた。
歩いて歩いて、歩き回った。

それでも、この広い新宿という街で、容易に彼は見つけられなかった。
しまいには、次第に焦ってきて、小走りになったほど。

―――そうよね、そんな簡単に見つかるわけないわよね。

そうだ、1回で見つからなければ何度でも来るしかない。
私の撩への想いはそんなにヤワなものではない。
あれから1年以上も忘れられずにいるのだ。
逢いたくて、声が聞きたくて、笑いかけてほしくて・・・。

だから、私はがむしゃらに彼を捜した。
でも、それも今日はもう無理そうだ。
外はすっかり暗くなって夜になっている。
そろそろ帰らないと、家族に心配をかけてしまう。

はぁ、と1つ溜息をつくと、車を止めてある駐車場に向かおうとして、はたと気づいた。

・・・ここはどこ?

高層ビル群からは少し離れた場所で人通りもそれほど多くないみたいで、どうやら迷ってしまったみたいだ。
私は、急に不安になって、駆け出したら余所見をしていて人にぶつかってしまった。

「きゃっ」
「おっと」

その拍子によろけそうになったのを、ぶつかられた人が助けてくれたみたいで。

「すみませんでした」

慌てて頭を下げた。

「大丈夫?」
「はい、大丈夫です。私の不注意でぶつかってしまってすみませんでした」

私は相手の顔も見ずにひたすら頭を下げた。
すると、その人の手が私の肩に置かれて「顔を上げてよ。おれは大丈夫だからさ」と優しく身体を上げられた。
その続きでゆっくりその人の顔を見て、私は驚きで身が固まった。

目を大きく見開いて、ただただその人の顔をマジマジと見つめていた。
だって、その人は・・・


―――私が逢いたくて焦がれていた、撩、その人だったのだから。


私が固まって動かないのを見て、撩は怪訝そうな顔をして、私を覗き込む。

「おーい、どうしたのー?」
「あ・・・」

相変わらず動かない私を見ていた撩だったけど、そのうちニッと笑って言った。

「ねぇ、君可愛いね。どう?一緒にお茶でもしない?」

ピクと反応して撩を見る。
何か言いたいんだけど、突如、逢いたいと願っていた人に逢えてしまったものだから、心も身体も正直ついていけなくて、私は頭の中が真っ白になっていたけど、これだけは分かった。

・・・あぁ、私、やっと彼に逢えたんだ

そう頭が理解すると、途端に今までの想いが溢れんばかりに零れてきて、それが雫となって、私の目からポロポロと零れ落ちていくと、撩の指が私の頬に触れ、涙を拭いてくれた。
撩は「どうしたの?大丈夫?」と困ったような、でも、優しい表情をして私を見つめていた。

「おれ、何かしたかな・・・」

と頭を掻いて、それでも、道行く人に私の泣き顔を見せないようにしてくれてるのか、撩は私を抱きしめてくれる。
そのさり気ない優しさに、嬉しくてドキドキして、ますます涙が溢れてきた。
私が落ち着くまで、撩は私を抱きしめて、背中をポンポンとしてくれていた。

あぁ、やっぱり彼だ。
厚い胸板、逞しい腕、鍛えられた身体、そのすべてを覚えていて安心させてくれる。
私は、安堵して撩の胸に身体を預けた。

しばらくして、落ち着いた私は、名残惜し気に撩から離れて、改めて撩を見る。

「すみません、突然、泣きだしてしまって」
「うん、それはいいんだけど・・・」

撩は私を覗き込んでいる。

「ホントにどうしたの?あ、もしかして、おれがカッコ良すぎて感激して泣いちゃったとか?」

とおちゃらけたように訊いてくる。
そうやって人を笑わせようとしてくるところ、変わってないな、と嬉しくなって泣き笑いでクスクスと笑う。

「あの・・・冴羽撩さん、ですよね?」
「そうだけど・・・なんでおれの名前・・・」

少々、困惑している撩とは対照的に、私は笑顔になった。

「あの、私・・・・・・」

その先、何て言おうか迷った。
初めて会った時、私は自分の名前を言わなかった。
でも、こんなことなら最初から言っておけばよかった。
そうすれば、すぐに思い出してくれるかもしれないのに。

そういえば、あの時、彼は私のことを何と言っていたかしら・・・?

何かに思いあたったのか、考える仕草をしている撩と、必死で思い出そうとする私。
しばらくして、2人同時に「あっ」と言った。

「「シンデレラ!!」」

同時に言って、お互いがお互いを見た。
撩はニッと笑っている。
どうやら、私のことを思いだしてくれたみたい。

「やっぱり、君はあの時の・・・シンデレラだったんだ。どこかで逢ったことがあるんじゃないかなぁ、とは思ったんだけど、髪型が変わってたから、最初は分からなかったよ」
「あ・・・」

私はあの時とは変わった髪に手を触れた。
そう、あの時はセミロングくらいの髪型だったけれど、今は、ショートヘアになっている。
撩はクスッと笑う。

「あの時も似合ってたけど、今のも似合ってるよ」
「・・・そう、ですか?」
「うん。あの時は清楚なお嬢様って感じだったけど、今は、美人な上に可愛くもなった・・・かな」
「え・・・」

美人、とか、可愛い、とか云われ慣れてないことを言われて思わず顔を赤らめる私を面白そうに見る撩は、からかっているようにも見える。
ククッと肩を揺らしている撩は楽しそうに目を細めて私を見た。

「で・・・なんか急いでる感じだったけど、どこか行く予定だったのかな?」
「え・・・?・・・あ」

慌てて腕時計を見ると、もう家族が帰り始めている時間だ。
早く帰らないと、と思いつつ、やっと撩に逢えた嬉しさに、心が、帰りたくない、もっと撩といたい、と叫んでいた。
心が揺れて・・・でも、自分の想いに正直でいたい、私は彼に逢いに来たんだ、と胸のところでギュッと手を握ると、撩を見た。

「お願いがあるんです」
「ん?」
「私に付き合って下さい!!」
「へ?」
「私、貴方に逢いに来たんです!」
「え・・・?」

突然のことだったけれど、撩の手を握って私は必死にお願いした。
そしたら、撩はフッと優しく微笑った。

「君はいつも突然だなぁ」

と笑って言うので、顔がカアッと赤くなる。
それでも撩は

「もちろん、喜んで」

と言ってくれて、私は嬉しくなってぱぁっと笑顔になった。

「でも、今日は家の人に言ってきたの?」

撩が私を覗き込んでくるその眼は、すべてを見透かしたように私を見つめている。
私はハッとなって俯いた。

「それは・・・」

言い淀んでいた私の態度、それだけで全てを察してくれたのだろう。
撩は、俯いている私の頭を優しくポンとたたいた。

「いいよ、言いたくなければそれで。・・・とりあえず、ご飯食べに行こうか?もう、食べた?」
「いえ、まだ・・・」

言われて、お腹がすいていることに気付く。
夢中で撩を捜していたから、今までは全く気付かなかった。
そう、と気付くと、お腹も主張してきて、小さくグーとなってしまった。

「あ・・・」

カーッと真っ赤になって俯くと、撩がクスクスと笑う気配がして、私の背中に手が添えられる。

「ほら、君もお腹がすいたみたいだし、まずは腹ごしらえしようか」
「・・・はい」

私は撩に連れられるまま『キャッツ・アイ』というお店に入った。
お店の中は私の好きな雰囲気で、マスターご夫婦もとてもいい人達で。
どうやら撩は常連さんみたいでマスター達と親しげに話していた。

お水が来てメニューを決めて、ひとまず落ち着いたところで、撩が話しかけてきた。

「確か留学に行ってたんだよね?いつ戻ってきたの?」
「アメリカに行ってました。戻ってきたのは・・・3か月前くらいです」
「へぇ、そうなんだ。それで、おれに逢いに来たって言ってたけど・・・」
「・・・あ」

そうだった!
私、つい勢いで恥ずかしいこと言っちゃった。
みるみるうちに顔がボンと真っ赤になった。

「あ、あの、それは、その・・・」

思わず吃ってしまうほど慌てる私を見て、撩が楽しそうにククッと笑っている。
それを見て、よけいに恥ずかしくなってくる。
でも、私が撩に逢いに来たのは事実だ。
それに、今日はたまたま会えたけれど、次にまた会えるかどうかは分からないから。

グッと手を力いっぱい握り、気づいたら、また勢いで言っていた。

「あの時、貴方と過ごした時間がとても楽しくて、アメリカに行っても忘れられなくて、日本に戻ってきたらまた貴方と楽しい時間を過ごしたい、って思ったんです!だから・・・っ」
「わざわざ逢いに来てくれたんだ?」

撩がニヤニヤと笑いながら私を見る。
私は恥ずかしくなって下を向いて、それでも、コクンと頷くと、撩がフッと笑う。

「ありがとう、嬉しいよ」

そう言った声が優しくて思わず顔を上げると、優しい目をした撩がいて、ドキッと胸が高鳴った。

「そうそう、おれも気になってたんだ。あの後、ちゃんと船に乗れたのかなってさ」
「あ・・・そういえば、あの時、私ったら乗る船を勘違いしてましたよね」

私もその時のことを思い出して、カァァッと顔が熱くなる。
すると、撩もクスッと笑う。

「そうそう、そうだったね。でも、ちゃんと乗れたみたいでよかった」
「・・・あの時は、ありがとうございました」
「いえいえ・・・で」
「?」

撩が私を見つめたまま、瞳を甘く煌めかせて、また私をドキッとさせた。

「何ていうの?名前」
「名前?」
「そ。君の名前だよ。おれは、君のことはシンデレラとしか知らないからね」

あ、そうだった。
そういえば、私、名前をまだ言ってなかったわ。

「すみません。そうですよね、私ったら」

お互いクスクスと笑いあって、私がそれを告げようとした、その時。
バタン!と大きな音を立てて、お店のドアが開かれ、中に何人かの男性が入ってきた。
お店の中にいた誰もがそちらに向き、私はハッとして、ガタン、と音を立てて立ち上がった。
私の表情を見てか、撩も椅子から立ち上がり、私を背に隠してくれる。
しかも、その人達は、私の知り合い・・・というか、父の知り合い、と言った方が早い。

「香さん・・・」

その中で先頭に立っている男性が私の名を溜息をつきながら呆れたように呼んだ。

ズキッと胸が痛んだ。

いやっ!
私自身が彼に自分の名前を言いたかったのに、他の誰かから知られるなんて。

怒りやら悔しさやらで黙っている私に、その男性・・・速水さんは再度、私の名前を告げた。

「香さん、こんなところで何をしてらっしゃるのですか?お父様を始めとして皆様、大変ご心配されてますよ。さぁ、私と共に戻りましょう」
「イヤっ!」

私は思わず即答していた。
そして、私を隠してくれている撩の服をギュッと痛いくらいに掴んだ。

「香さんっ!」
「私は。私は・・・・・・」

彼らに見つかってしまったことが悔しくて。
でも、何を言い返していいか分からなくて。

ただ言い淀むと、それを横目で見ていた撩が、スッと彼らを見やった。
その視線は鋭く、彼らが後ずさりしたのがわかった。
そして、撩が正面から彼らを見据えて、冷めた視線で笑みを浮かべる。

「・・・悪ぃけど、今日のところは帰ってもらおうか。彼女は帰りたくないって言ってるし、おれも帰すつもりはないし」
「なっ・・・貴様、何を・・・」

彼らが焦っているのを目の端に捉えながら、私は撩を見つめた。

―――私を帰すつもりはないって・・・?

それがどういう意味を成しているか、図りかねたままでいると、撩はクッと笑った。

「お父様、とやらに伝えとけよ。彼女もこう言ってることだし、おれももっこり美人ちゃんと一緒に過ごしたいしな」
「・・・っ!香さん、こんなヤツのところになんかいたらいけません。さぁ、私と一緒に戻りましょう」
「・・・いやっ!イヤです」
「ほら、彼女もこう言ってるんだしぃ。いい加減帰ったら?」

撩の言葉はおどけているが、目は一切笑ってなくて冷めていて。
それの比が極端とも言えるほどで、私から見ても異様な迫力があった。
何より、撩の纏う気が鋭い刃のように研ぎ澄まされたのを見て取った彼らがさらに後ずさる。
明らかに焦って慌てている彼らのリーダー、速水さんが声を上ずらせながら撩に尋ねる。

「お、お前、名前は何ていう?」
「おれ?おれは冴羽撩」
「冴羽、撩・・・。お、覚えてろよ」

完全に撩に呑まれていた彼らはそう捨て台詞をはくと、速水さんを先頭にバタバタと慌しくお店を出て行った。
何かされたわけでもない、ただ、冴羽撩、という人間にしてやられて、お決まりの捨て台詞とともに慌しく去って行くしかなかった彼らに、私以外の3人はプッと吹き出していた。

「なんだ?あれ。あのセリフはもう聞き飽きたってんだよ」
「可っ笑しいの。あの人達、威勢だけはよくて、結局、冴羽さんにも彼女にも何も手出しすることができなかったわね」
「フン」

撩とマスターご夫婦は暢気に笑いながら話をしていたけれど、私は撩の服をギュッと握ったまま動けずにいた。
そんな状態の私に、ふと撩が気付き、手を後ろに持っていって、私の手を握り、そっと服から放した。
そして、クルリと振り向いて私と向き合った撩は、私を見て優しく微笑んだ。

「もう大丈夫だよ」
「あ、あのっ・・・助けていただいて、どうもありがとうございました!」

きつく握りしめていたのか、手が赤くなっている。
自分の身内がこんなことをした、と思うと恥ずかしい。

「本当に、どうもすみませんでした」

私は深々と頭を下げた。

「ちょ、ちょっと待って。顔を上げてよ。なんで君が謝るんだよ」
「あの人達は・・・私の知り合いです。それに、私の・・・っ」
「ストーップ。その先は言わないでいいから。君のせいじゃないし、むしろ、おれは君みたいな美人に頼ってもらえて嬉しいくらいだけど?」

ガバッと顔を上げて目が合うと、撩がニヤリと笑う。

「君のこと、おれも知りたいし。せっかく、逢いに来てくれたんだし、とりあえず、今日はウチに来る?」
「え・・・いいんですか?ご迷惑じゃないですか?」

ビックリしながら撩を見る。
撩くらいカッコ良いと彼女はいると思うし、私が突然行ってもいいものだろうか、と首を傾げる。

「まさか。君みたいな女性(ひと)が来てくれたら大喜びだよ」
「ちょっと、冴羽さん」

マスターの奥様・・・美樹さんが、撩を窘める。

「何?美樹ちゃん」
「何、じゃないわよ。彼女を冴羽さんの家に泊めるなんて危険極まりないわ。彼女はウチに泊めるわ。じゃないと、気が気じゃなくて夜も眠れないわよ。ね?ファルコン」
「そうだな。しかも、撩と2人っきりだし、限りなくキケンだな」
「な、なんだよ、2人して。おれだって、ほぼ初対面の相手に手は出さねーよ」
「信用できん。なんせ、お前だからな」

むむむー・・・と撩とマスターがいがみ合っている。
私は3人の会話を聞いて、慌てる。

「あのっ、お2人は新婚さんでいらっしゃるんですよね?お邪魔はしませんし、冴羽さんのお宅にも行きませんので、どうぞご安心下さい」

それを聞いて、3人は、え?という顔をする。

「じゃぁ、どこで泊まるつもりしてるの?」
「どこか、ホテルとか」
「そんなの高いわよ。私達のことは何も気にしなくていいから、ウチで泊まって」
「いいえ、できません」

今度は、私と美樹さんがあれこれ言っていると。

「じゃぁ、君はやっぱりウチに来なよ」
「冴羽さん!」
「撩!」

マスター夫妻が撩を止めに入る。
撩はしれっとして続ける。

「ウチはアパートやってるだけあって、部屋はたくさんあるし、おれと一緒の部屋じゃなければいいわけだしさ」
「撩・・・」
「どう?」

撩がニヤリと笑って、私を覗き込む。
撩の瞳を見つめていた私は、コクリと頷いた。

「ご迷惑じゃなければ、家に泊めていただけますか?」
「おっし、決まり~♪ってなったら腹減っちゃった。美樹ちゃん、ご飯できたら持ってきてくれる?ほら、君も座って、まずは食おうぜ」

機嫌を良くした撩は元の椅子に座って美樹さんに言っていて、美樹さんとマスターは苦笑して料理の続きを作りに行った。
私もそっと座って、撩を窺う。

「あの、ホントに大丈夫なんですか?その・・・いきなり私がお家に伺っても・・・」
「へ?あぁ、そんなの全然大丈夫だよ。おれ、女いないし、1人暮らしだから」

え?
彼女、いないの?
今、そう言ったよね?

私は目を見開いて驚き、でも、同時に、ホッとしたのも事実だ。
それは、もう誰がみても解りやすすぎるくらい。
私のことをニヤニヤしながら見ていた撩にも知られてしまうぐらいに。

あぁ、私の気持ちは彼には筒抜けなんだな。
そう思ったら、急にカァァッと顔が熱くなる。
それは誤魔化せないけど、平静を装うために水を飲む。
案の定、撩はクスクスと笑っている。

そこで、オーダーした料理を美樹さんが持ってきて、話は中断。
食べることに集中した。

食べながら話したことは、留学していた時のこと。
行きは船で行ったけど、帰りは飛行機で帰ってきたことを話すと、マスターが『実は撩は飛行機が苦手』だということを暴露して、撩がふて腐れていたけれど、ニヤリと笑って、今度は撩がマスターの苦手な『モノ』の鳴き声をし出す。
2人でギャーギャー言っていて、当の本人達は本気なんだろうけど、見ているコッチとしては、仲が良いんだろうな、と思いながら、苦笑する美樹さんとそれを見ていた。

「美味しかったぁ」
「ん。そりゃよかった」

撩がニヤリと笑う。

「偉そうに」

ボソッと言うマスターに私はクスクス笑い、撩は聞こえなかったフリして、美樹さんにちょっかいをかけている。
それにマスターが応戦するのを見て、楽しそうにからかっている撩。
それから、私達は、マスター夫妻に御礼を言って、お店を出た。

新宿は明るくて、人も多くて。
私じゃなくてももう一軒、どこかに寄りたくなりそうな、そんな想いを抱かせる街だ。
私が珍しくてキョロキョロとしているので、撩は苦笑して、私の肩を抱き寄せる。

「え?」
「そんなにキョロキョロしてると、誰かにぶつかるよ」
「あ、すみません」

謝ると、撩はいいって、と笑う。

「ちゃんとおれが見てるから大丈夫だよ」

撩の手は私の肩にあり、もし、私が転びそうになったとしても、支えてくれるだろう。
そして、今のセリフ。
ドキッと大きく胸が高鳴った後、ドキドキと鼓動が速くなっていく。
まして、これから行くのは彼の家。
そう意識しただけでドキドキが増していく。

彼への気持ちが大きくなる。
こうやってしゃべったら、もっと彼のことを知りたくなる。

彼を見たい、彼の声を聞きたい。
もっともっと一緒にいたくなる。

これから向かう、彼の家はどんなだろう、と想いを馳せる。
どんなことを話そうか、とワクワクする。

途中、コンビニで2人で選んで色々買い込んだ食料を持ち、いざ、向かうは逢いたかった男性の家。

どんな家なのかしら?
私は、嬉しさと、期待と、少しの罪悪案と、突然行くことの申し訳なさが混ざった気持ちを抱えて、彼とともに、彼の家へと歩いていった。







++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

続きます(*^_^*)
香ちゃん視点で描いてますv
色々とツッコミどころがあるかと思いますが、どうぞスルーしていただけると有難いです(*^^)v


【 2013/06/30 (Sun) 】 NOVEL | TB(-) | CM(0)
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撩&香の一コマ♪
プロフィール

実梨

Author:実梨
シティーハンターが好きで、二次創作を始めました(^^ゞ
カッコいいリョウと可愛い香ちゃんを目指して、日常の色んな2人を描いていけたらいいな、と思ってますv
初心者なので、まだまだ未熟で駄文ばかりではありますが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです♪

更新履歴
・ 8/ 24 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 7/ 18 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 6/ 16 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 4/ 22 MEMOに拍手御礼(お待たせしてすみませんでした)
・ 4/ 17 遅ればせながら香ちゃん、お誕生日おめでとうvv
・12/ 7 サイト6周年vホントにどうもありがとうございますvvv
・11/ 13 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・11/ 2 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・10/ 19 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 8/ 10 EVENTに5周年記念SS(後編)をUP&MEMOに拍手御礼
・ 8/ 4 EVENTに5周年記念SS(前編)をUP(今更ですみませんっ)
・ 7/ 13 MEMOに拍手御礼
・ 7/ 2 NOVELをUP
・ 6/ 1 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 5/ 23 NOVELをUP
・ 5/ 5 MEMOに拍手御礼
・ 4/ 10 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 3/ 31 香ちゃんお誕生日おめでとうvv
・ 3/ 26 撩ちゃんお誕生日おめでとうvv
・ 3/ 23 NOVELをUP
・ 3/ 14 MEMOに拍手御礼
・ 3/ 2 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 2/ 19 NOVELをUP
・ 2/ 10 SSSをUP
・ 2/ 1 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 1/ 22 MEMOに拍手御礼
・ 1/ 10 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 1/ 5 どうぞ2014年もよろしくお願いしますvNOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・12/ 31 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・12/ 29 MEMOに拍手御礼
・12/ 25 NOVELをUP
・12/ 24 NOVELを2話分UP
・12/ 15 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・12/ 7 サイト5周年~♪ホントにどうもありがとうございますvv
・11/ 28 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・11/ 18 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・10/ 20 MEMOに拍手御礼
・10/ 5 MEMOに拍手御礼
・10/ 4 NOVELをUP
・ 9/ 23 NOVELをUP
・ 9/ 16 LINKに素敵サイト様1件追加!&MEMOに拍手御礼
・ 9/ 1 NOVEL2話目をUP&MEMOに拍手御礼
  ・ 8/ 15 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 8/ 5 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 7/ 30 NOVELをUP&MEMOに拍手御礼
・ 7/ 7 七夕SSをUP
・ 6/ 30 NOVEL1話目をUP&拍手御礼v
・ 6/ 17 ついに!新しいPCになりましたーっvvv&拍手御礼v
・ 2/ 8 EVENTに4周年記念SSをUP&MEMOに拍手御礼v
・ 1/ 20 LINKに素敵サイト様1件追加!
・ 1/ 8 NOVELにお正月SSをUP&MEMOに拍手御礼v
・ 1/ 2 2013年v新年あけましておめでとうございますvv今年もどうぞよろしくお願いいたします☆
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